2021年11月2日
中央大学とトッパン・フォームズ、紙媒体と電子媒体の情報伝達効率の差異は媒体への「慣れ」
中央大学 国際情報学部 飯尾研究室(飯尾研究室)とトッパン・フォームズは10月29日、紙媒体と電子媒体の情報伝達効率の差異に関する共同研究を実施し、文章や図を閲読した際の理解度と閲読時間に関して、年齢や媒体の特性よりも、媒体への「慣れ」の影響度が高いということを確認することができたことを発表した。
通説では電子媒体よりも紙媒体の方が、文章を読む速度や記憶の定着率などの情報伝達効率が良いとされている。トッパン・フォームズでは、2013年7月に紙媒体と電子媒体における情報の理解度の差異に関する脳科学実験を行っており、「ディスプレーよりも紙の DMの方が、理解度が高い」ということを確認しているという。
しかし、デジタルシフトが急激に加速した近年において、同様の研究は行われておらず、また年齢などの影響度も不明瞭であるため、現在における紙媒体と電子媒体の情報伝達効率の差異とその要因を検証することを目的に、人間と情報システムのインタラクションを専門とする飯尾研究室とトッパン・フォームズは昨年度から同研究に着手。
同研究では、紙媒体・電子媒体それぞれの情報伝達効率の判断基準を、文章や図を含む原稿の「理解度」と「閲読時間」とし、年代別に把握することを考慮して、被験者を、若年層である20代、中年層である30~50代、高齢層である60~70代の3グループ、各10人に設定。被験者には、紙とディスプレーそれぞれに同様の内容・体裁の文章・図を含む7パターンの原稿を提示し、理解度と閲読時間を測定。なお、理解度は、提示した原稿の内容に関する設問(4~5問)の正答率によって判断。また、紙媒体・電子媒体それぞれの「慣れ/不慣れ」や「好き/嫌い」といった利用状況などに関する属性アンケートも実施したという。
研究の開始当初は仮説として、「年齢層に関わらず、紙媒体が電子媒体よりも一貫して情報伝達効率が高い。ただし、年齢層が低いグループほど電子媒体の情報伝達効率が高くなる傾向がある」と想定。
理解度は、若年層では電子媒体の方が高くなり、中年層、高齢層では差は見られなかった。また、閲読時間は、若年層・中年層では電子媒体で短くなり、高齢層では紙媒体で短い傾向に。この結果から、高齢層では紙媒体において閲読時間が短く、電子媒体との理解度に差は見られなかったため、仮説の通り紙媒体の方が電子媒体よりも情報伝達効率が高かったという。
一方、若年層・中年層では電子媒体において閲読時間が短く、理解度も若年層では電子媒体が高く、中年層では差が見られなかったため、仮説に反し、電子媒体の方が紙媒体よりも情報伝達効率が高かったという。
その要因として、属性調査において、中年層のグループと若年層のグループでは「日常的によく使い、慣れている媒体は電子媒体である」と回答した割合が高かったことから、媒体への「慣れ」が影響していると考えられ、紙媒体と電子媒体のどちらが情報伝達に適しているかは、年齢や媒体自体の性質よりも、利用者と媒体の関係性の方が、影響度が高いと結論付けた。
この結果から、ダイレクトメールや通知など紙媒体や電子媒体を利用するコミュニケーションにおいては、受け取り手の年齢だけではなく、属性を考慮した上で、最適な媒体を選択したり、紙媒体と電子媒体の両方を組み合わせたりといった、きめ細やかな情報伝達手段の設計を行うことが重要であるという。
同研究を踏まえ、今年度は生活者の媒体への「慣れ」と情報伝達の関係性についてフォーカスし、研究を継続し、エビデンスの蓄積を実施するという。
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