2023年1月12日
1人・2人・グループ・先生と、Qubenaで生まれる個別最適で多様な学び/新座市教育委員会
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埼玉県の南西部に位置する新座市。人口約16万6000人、市の半分は東京都に隣接している。学校数は小学校17校、中学校6校、児童生徒数は約1万3000人。2019年度からICT環境整備に取り組み、2021年5月には1人1台情報端末体制が整った。環境整備だけでなく、ICTを活用した「個別最適な学び」「自由進度学習」など学びの変革に取り組んでおり、2022年からは市内全小中学校で学習eポータル+AI型教材「Qubena(キュビナ)」を導入している。新座市教育委員会の金子廣志 教育長、新座市立栄小学校の淺田敦子校長、岸本拓也教諭、黒瀧勇介教諭に話を聞いた。
紙のドリルを「デジタル教材」に、一斉授業を「個別最適な学び」へ
2020年春、日本は新型コロナウィルス感染症の拡大で学校が休校となり、教育現場はどこもパニック状態となった。そんな中、新座市ではGIGAスクール構想が展開される前から補正予算を組んでICT環境整備に取り組んできた成果で、休校中でもオンデマンドで授業を提供することができた。多くの教員が自分の授業をタブレットでビデオに収め、370タイトルの授業が休校中の子供たちに届けられた。
金子教育長はこの頃を振り返り「これが私たちのGIGAスクールの始まりだったと言えるのではないかと思います。夏からはLAN工事も開始されまして、児童生徒、教職員にアカウントを付与しました。GIGAスクール構想によるタブレット端末も順次配備されるようになり1人1台の体制が整いました。当初からGoogle Classroom等のGoogleWorkspaceのアプリケーションやロイロノート、を導入して授業の中で活用していたわけですが、学習ソフトをどれにするかということで様々な研究、あるいは視察等を行っていました」と語る。
学習ソフトの導入にあたって金子教育長たちの狙いは、子供たちにデジタル教材を提供するのと同時に、授業を変えることにあった。
「授業を一斉授業から個別最適な学びに変えていくという考えがありました。しかし、紙ベースの教材からデジタル教材に変更していくということは、勇気のいることでした。幸いなことに小中学校5校で、前年度に行われた経済産業省の未来の教室の実証実験に参加をしていまして、そこでQubenaを使って授業を行ったり、問題を出したりしていて、非常に好評だったということがありました。そこでQubenaを市内全校に導入をしたいということで進めてきたわけです。」と授業変革に向けたQubenaの導入計画を語った。
AI型教材Qubenaを導入したことによって、教育委員会に寄せられた苦情や抗議は全くなかったという。紙ベースのドリルを削減してQubenaに変えていったので、保護者負担がそれほど変わらなかったからだ。むしろ初期の段階で導入を躊躇した学校は、保護者から「なぜ導入しないんだ」という苦情も寄せられたという。子供たちがタブレットを家庭に持ち帰り、主体的に学ぶ姿を目の当たりにして、「こんなに真剣に学んでいる子供の姿を今まで見たことがない」という保護者の声が多数あったからではないかという。
「もう一つ、実は大きな変化が起きています。それは一斉授業から個別最適化された学びに授業が変わりつつあるということです。AI型教材Qubenaは、子供の持っている力を判断し、その子に合った問題を出題しますので、子供たちへの学習障壁は大変低く、自分の力で問題をクリアするということができて達成感を得ることができます。これによって次へのチャレンジする意欲が生まれるわけです。今、学校は一斉指導の授業等から様々なスタイルの授業に変容しています。教授型一斉授業から、子供たちが自ら課題を見つけ、探究していく授業への変容ですね。これはGIGAスクール構想が目指す方向であると考えますし、未来を生き抜く力を子供たちにしっかりとつけていく上においても、こうした授業はさらにさらに多くなっていくべきであろうと考えています」と金子教育長はQubenaを活用した授業の発展に期待を寄せている。
保護者の理解を得て推進するQubena活用で「個別最適な学び」 新座市立栄小学校
新座市立栄小学校では児童一人ひとりの良さを認め、自己有用感、自己肯定感を高める指導に力を入れている。2020年度から3年間、新座市教育委員会の委嘱により、確かな学力を育てるICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の研究に取り組んでいる。
Qubenaを導入するにあたり、新座市では利用料を保護者負担とした。保護者には今までより負担額が大きくなることや、初めてデジタル教材を採用することについて理解してもらう必要があった。
栄小学校の淺田敦子校長は、保護者への説明について「まずはQubenaの良さを知っていただくためにCOMPASS社に協力いただき、トライアルを実施しました。授業だけでなく、家庭に持ち帰ってQubenaを使い児童や保護者に実際に触ってもらい、その良さを知っていただくようにしました。また、GIGAスクール構想の趣旨やこれからの教育のあり方について説明し、誰一人取り残すことなく、一人一人に個別最適化された学びを行っていくための有効な教材であることを、保護者あてに文書で配布し理解していただきました。同時に、従来購入していた紙のドリル類を買わないなど、負担を少なくするように教材の選定を行いました。保護者の方からはQubena導入に多くの理解をいただきました」と語る。
一人ひとりに合った個別最適な学びを実現するために、段階的にQubenaの活用を進め、本年度は自由進度学習にも取り組み始めている。Chromebookを家庭に持ち帰り、家庭学習でもQubenaを使用している。家庭学習での活用は、今まで紙のドリルやプリントを使って復習していたことをQubenaに置き換えて行っている。教師がワークブック機能を活用して取り組ませたい問題を選択し、配信している。
Qubenaを使って良かった点について淺田校長は、「1つ目が、宿題の準備時間や確認の時間が削減されたこと。2つ目が、正答がすぐわかるので個人の力が把握しやすくなったこと。3つ目が、取り組んだ時間等も短い時間で取り組んでいる、かなりの時間がかかっているなどわかるので家でどのような取り組み方をしているかがわかること」だとしている。
5年生の算数でのQubenaを用いた自由進度学習の実践 岸本拓也教諭
5年担当の岸本教諭の「整数の性質を調べよう」の授業計画について。本来の授業時数は10時間のところ、Qubenaを用いた自由進度学習を取り入れることで、7時間で終えることができた。そのため、演習時間2時間の予定を5時間ほど取ることができた。
授業の進め方についは、ミニレッスン5分、めあてを立てる5分、自由進度学習25分、振り返り10分で構成している。ミニレッスンでは、その時間に本来やるべきである未修事項を児童に伝える。新しい内容なので、このミニレッスンのみでポイントを押さえることができた児童はどんどん演習問題に取り組み、難しいと感じた児童はゆっくりと進めていくようなめあてを立てる。その後、各自自由進度学習に取り組み、最後に、振り返りを行う。教材は、教科書、Qubena、プリントを使用している。
めあては、その時間、全力を出して、ギリギリ達成できないくらいの少し難しい内容にするよう伝えており、教科書、Qubena、プリントで問題を解く以外にも自分で問題を作ったり、学びに困っている友達に対してミニ先生をやるなど、児童ごとに様々だ。協働学習ソフトも活用し、教員によるめあての確認や、電子黒板での児童間の振り返りの共有を行うことで、自分に合っためあての立て方や振り返りの力を育てられるよう工夫している。
新しい学習形態について岸本教諭は、「『1人で、2人ペアで、複数人グループで、内容が難しいので教員と一緒に』、など児童によって多種多様です。昨日は1人で学習をして、今日の内容は友達と一緒に取り組むなど、日によって変化もあります。その結果、主体的に取り組むことができたり、自分に合ったペースで進めることができています。一斉授業でしたら黒板に向かってみんなが前を向いてノートを取るという授業が一般的だと思うのですが、友達と肩を並べて勉強したり、机を三つ三角形に揃えて並べたり、1人で学習に取り組んだり多くの姿を教室で見ることができます」と、教室の風景の変化や自由進度学習の学び方の多様性を感じている。
6年生の算数で行った自由進度学習の一斉授業との違いについて 黒瀧勇介教諭
6年担当の黒瀧教諭は、6年生算数の「角柱と円柱の体積」の授業で自由進度学習に取り組んだ。単元の本来の授業時数は5時間だが、自由進度学習では2時間で教える内容を1時間でまとめて学習を進めたので、3時間ほどで終わり、残りの2時間を学習したことがしっかり身に付いているかの確認の時間とした。学習で扱う教材は教科書、Qubena、プリントが主。基本的には教科書の問題をまず解かせるようにして、その中で各自自分の判断で、Qubenaやプリントで学習をしてもらう。Qubenaに関しては毎日の宿題としても活用している。子供たちの学習状況の確認として使用することが多い。
一斉授業と自由進度学習の違いについて黒瀧教諭は、「児童が主体となって学習を進めることができるので、自分に合ったペース、学習内容、学習方法を子ども自身が自分で考えて取り組むことができています。自分が苦手としている学習内容に重点を置いて子ども自身が考えて取り組むことができます。そこが利点になっていると思います。また教え合ったり対話したりする時間が一斉授業よりも多くなるので、インプットだけではなくて、アウトプットする機会も多くなります。アウトプットすることで理解が深まったり、知識の定着を自分自身で把握することができるようになると思います。」と、児童主体の学びの深化を語る。
Qubenaを使った自由進度学習の成果は、子どもたちの成績や学びに向かう姿勢の変化にもつながっている。岸本教諭、黒瀧教諭のクラスともに、単元末に実施したテストの結果が期待平均を上回った。Qubenaを活用した学習では、テストの結果に自分自身の学びが反映されているという実感があるので、点数が取れるととても喜んでいる児童もいて、やる気に繋がっているという。
栄小学校では今、主体的対話的で深い学びを実践し、児童一人一人の確かな学力の育成を図る、個別最適な学びの実現を目指して授業改善に挑戦中だ。
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