2024年2月8日
朝学習の15分「すららドリル」で見えてきた個別最適な学び/福井市至民中学校
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教科別のエリア、異学年や地域との多様な交流を可能にする環境など、特色ある教育を推進する福井市至民中学校。同校では現在「すららドリル」を主に朝学習で活用する中、学びに向かう生徒の姿勢や指導にも変化が表れてきたという。「すららドリル」を導入した経緯や活用して実感しているメリットなど、同校の秦 計代 校長、乾 竜次 教諭(1学年、理科) 、山田 尚弘 教諭 (2学年、技術・家庭科)に話を訊いた。
縦(クラスター)と横(学年)の学び合いを大切にした教育活動
「未来につながる学力の育成」を教育目標に掲げる福井市至民中学校。2008年に現在の福井市南江守町に校舎を新築し移転した。
ハードとソフトの両面にわたり、従来の学校の構造とは一線を画す。生徒が各教科の教室に移動して学習する「教科センター方式」を採用しており、教科エリアごとに特色ある空間が整備されている。例えば、理科のエリア、社会科のエリアといったように、生徒は当該教科に必要な用意をし、そのエリアへ”学びに行く“スタイルだ。
「異学年クラスター」と呼ばれる、学年の枠を越えた縦の繋がりを活かす教育活動に力を注ぎ、地域との連携で郷土を愛する心の育成も大切にしている。教員や生徒、先輩や後輩、学校や地域住民など自在な交流が生まれやすく、柔軟な学習形態を可能にする設計が細かに施された学校だ。
豊富な解答形式の「すららドリル」で実践的な学力を身につける
全校生徒は現在405名、各学年4クラスと特別支援学級がある。端末にはiPadを使用。調べること、書くこと、まとめることもこれまでは紙媒体だったが、端末整備が完了したことで学びの手段が増えた。
福井市からの補助金と要請を受け、2022年度に1年生を対象にAIドリルを導入した。提示があった6社の中から選定したが、使っていく中で物足りなさを感じてきたという。
秦校長は、「そのAIドリルには選択問題しかありませんでした。子どもたちにはもう少し深く考えさせたり、しっかりと記述の解答を求めたりする問題があるといいなと教員間で話をしました。2023年度は1・2年生にAIドリルを導入するよう市から要請がありましたので、今度は記述式の問題も揃った『すららドリル』を選定しました」と経緯を説明する。
生徒の学力に応じ、問題の難易度を自動的に変えて出題するAI機能を搭載した「すららドリル」。同校が求めた記述式の問題も豊富に用意されており、思考を深めながらより実践的に学力を身につけることができる。
朝学習に「すららドリル」、学びに選択肢と楽しさが生まれた
同校では毎朝8時から開始する15分間の朝学習で「すららドリル」を活用。
2023年度から同校に着任し、ICTおよび学習担当を務める乾教諭は、前任校での指導時からアナログな学びに違和感があったと話す。「生徒が学びを選択できて、楽しく学習するにはICTが非常に良いと思っていました。本校2年生が『すららドリル』を朝学習に取り入れていると聞き、1年生の朝学習でも活用できないかと始めました」。
当初、生徒には課題を出さないと取り組まないのではないかと思っていたという。ところが「すららドリル」の機能に興味をもち、積極的に使う生徒たちの様子が見られたことから、教科と範囲だけを指定し、あとは生徒各自の判断で問題を選んで学ぶ形とした。その方法が今は「とても軌道に乗っている」と乾教諭は話す。
この他、「すららドリル」は授業でも一部利用している。社会科では単元末の復習に「すららドリル」から出題することで確認テストのように利用。理科では授業での利用はまだないものの、今後家庭での学習や反転学習での活用を見込んでいるという。
生徒の心を掴む学びやすさ、個別対応のしやすさを実感
アニメーションによるわかりやすいレクチャーで弱点を復習できるなど、学びやすい機能が備わった「すららドリル」。乾教諭はその「取っつきやすさ」に注目する。
特別支援学級でも「すららドリル」を活用している。ICT主任で特別支援担任の山田教諭は、学年を遡った学習ができることに利便性を感じている。生徒たちの学力はレベルも進度もばらつきがあるが、ある生徒が演習をしている時に、他の生徒に個別対応できることも非常に助かっているという。
「書くことが苦手な生徒も多いですが、選択問題であれば画面タッチで答えられます。思いを言葉にできない生徒も、やりたいところをやってみようと伝えると自分で選んで学習できています」。「すららドリル」が生徒の自学自立をしっかりサポートしているようだ。
見えてきた個別最適な学び
紙とペンでの学習では取り掛かりが遅い生徒も、「すららドリル」は取っつきやすいこともあり学習開始の初動が早くなった。生徒だけでなく教員側にも変化が生まれている。
乾教諭は、時間にも気持ちにも余裕が持てるようになったと自身の変化を話す。「生徒が自由に問題を選んで、調整できる。個別最適な学びに近づいているんじゃないかと思います。これまでプリントの印刷などの準備面に時間がかかっていましたが、それがなくなり、余裕ができて他のことに力を使えるようになりました」。
山田教諭は、昨夏校内の教員向けにICT研修を実施した。「すららドリル」をはじめ汎用性の高いアプリケーションなど実際に触れてもらう機会を設けたという。ICTの十分な活用までにはまだ課題があるというものの、「学年に1人ずつICT担当がいます。その教員に聞いたり、学年で教え合ったり、教員同士助け合いながら学ぶ雰囲気が本校にはあると感じています。各担任や各教科でもう少しICT活用が広がれば、生徒たちにとっても良いだろうと思っています」と語る。
未来につながる学力の育成に
乾教諭は、ICT教育を進める中でICTが学びの「良い面」を増幅してくれることがわかってきたと明言する。それを生徒たちに“選択肢の一つ”として今示しているところだという。「紙でもアプリでも何でも、将来子どもたちが自ら手段を選択できて、さらにはそれを使って協働的に学び合いできることを目指しています」と目標を語る。
山田教諭は、業務改善とそれによる良質な指導に期待を寄せる。「AI教材を使うことで印刷の作業もなくなり、仕事がラクになるだろうと思っています。『すららドリル』を使えば学習管理画面で生徒のつまずきを早く知ることができます。テスト以前に気づけば、授業のやり方も変わってくると思います。子どもたちをより見てあげることができる。どんどん活用していくといいのだろうと考えています」。
2024年度以降は、同校の裁量によってAI教材の導入を判断していくという。
その中にあって、秦校長は「AIドリル」の有効性に理解を示す。
「AIドリルはテスト機能もあるので定期テストやテスト前の事前学習での利用もできるでしょう。今はまだ使いきれていない部分も学習形態と上手く組み合わせながら、そしてさらに子どもたちが学力をつけていける方法を教員間で学び合いながら活用していけるといいのではないかと思っています」と前向きだ。
「すららドリル」で個別最適な学びが広がっている様子の同校。ここまでの過程で得られた良い兆しと新たな展望を集結させて、これからも「未来につながる学力の育成」に取り組んでいく構えだ。
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