2021年6月8日
常に最善の教育環境を――いち早く教育現場にタブレットを導入した桐蔭学園、導入後の5年間を振り返り見えた課題と向き合い方
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「生徒の理解」と「先生の教えやすさ」を最優先に
進学校として、またスポーツ強豪校として国内有数の知名度を誇る桐蔭学園は、幼稚園、小学校、6年間の一貫教育を行う中等教育学校、高等学校、そして大学までを有する総合私立学校だ(中学校は2019年に募集を停止し、中等教育学校へ一本化された)。同校はICTを活用した教育にも積極的に取り組み、2015年には中学校・中等教育学校の新入生と、これを受け持つ教員にiPadを貸与し、授業のデジタル化を推進してきた。導入開始時の詳細については、マイナビニュース「新入生全員にiPad 500台を貸与。生徒に気づきを促す、桐蔭学園が実践するICT教育への挑戦」をご覧いただきたい。
本稿では、導入から5年が経ったいま、これまで同校がいかに教育現場のデジタル化に取り組んできたか、その運用のなかで見えてきた課題と解決策、コロナ禍での影響などについて紹介する。
なおインタビューに応じていただいたのは、5年前と同じ山口 大輔氏。当時は技術科担当教諭として教壇にも立たれていたが、現在は桐蔭学園全体のICT環境構築を統括する情報基盤センターの一員になっており、学内のデジタルインフラや、中学・中等教育学校・高校で利用するデバイスの管理を担当されている。
山口氏によれば、その後も中学および中等教育学校の新入学生へのiPad貸与は継続されており、当初は一部に限られていた教員への貸与も、現在では全員が対象となっている。アプリケーションは、ソフトバンクとベネッセが提供する教育プラットフォーム「Classi」と、タブレット向け授業支援アプリケーション「ロイロノート・スクール」をメインに、必要に応じてスライド作成ツールやグラフィックツールなどを追加して利用しているという。
学内全2,038台中1,488台のiPadと、多岐にわたるアプリケーションの管理という大役を、山口氏が担うために活用しているのが、アイキューブドシステムズのMDMサービス「CLOMO MDM」だ。
この「CLOMO MDM」が重宝されるシーンとして、山口氏があげたのがアプリケーションのバージョン管理だ。導入当初、Power Point for iPadには、縦書きで作成したはずの文字列が、再読込すると横書きに変更されてしまうという現象を起こすバージョンがあった。これを把握していた山口氏は、あえて全デバイスのPower Point for iPadを旧バージョンのままにしていたが「不具合が伝わりきっておらず最新版へご自身でアップグレードしてしまった先生がいて、縦書きが表示できないと大騒ぎになった」ことがあったという。
教員オリジナルの教材は、それを作成した時点での動作や表示を確認して完成させるものなので、生徒が使うタイミングとの間には、時間差が生じることもある。その間に、メーカーがアップグレードを行ってアプリケーションに変更が加えられていると、元の教材を新バージョンに合わせて作り直さねばならなかったり、予期せぬトラブルが起こったりするケースもあるということだ。
「大事なのは、生徒が授業内容を理解すること、そして教員が教えやすい環境をつくることです。アップグレードで不具合を修正したいというアプリメーカーの意図とは関係なく、教材を上手く利用できるようにすることを考えながら、MDMでバージョンの管理を行っていくことが重要です」(山口氏)
充実したサポート体制が教育現場ならではの課題を解消
デバイス本体の管理面において山口氏は、CLOMO MDMのサポートを高く評価する。なかでも同氏の要望に応えるかたちで実装した「紛失時サウンド機能」は、教育現場ならではの課題を解消するのに役立てられている。
「子どもたちが『紛失した』というデバイスを探す際、GPSで二次元的な位置を把握することはできても、それが例えばどの階にあるのかまでは分かりません。そこで遠隔操作で端末に音を出させることができるようにしてもらいました。その結果、今月は既に3台、行方不明だったiPadを見つけることができています」(山口氏)
ほかにも、各デバイスのバッテリー残量およびHDD残量を「CLOMO MDM」の管理画面から確認できることや、アプリの特定バージョンが搭載されたデバイスを探せるような検索条件の追加といった改善が行われており、膨大な数のデバイスを管理する山口氏とって、何かあればすぐに電話できるCLOMO MDMのサポート体制は日々の業務において、心強いパートナーとなっている。
「また、進級によって生徒が利用する教室が変わる、つまりアクセスするWi-Fiアクセスポイントが変わる際には、各生徒が使っているデバイスのW-Fiプロファイルを確認・変更しておく必要があるのですが、その検索方法を詳しく教えてもらうなど、アイキューブドシステムズにはいろいろと助けてもらっています」(山口氏)
ICT活用を積極的に進めてきたことは、コロナ禍においても功を奏した。実は同校では、緊急事態宣言が発令される以前から、インフルエンザによる学級閉鎖・学年閉鎖に入った際に、生徒が持ち帰ったiPadのロイロノート・スクールに授業動画を送信し、そこで提示した課題を生徒から集めるという手法を採っていた。4~6月に自宅学習期間となったときにもこの方法が踏襲され、約2ヶ月におよぶリモート授業を無事、成功させることができたという。
変化に柔軟に対応しながら、常にベストな教育環境を追求
万事順調に進んでいるように見える同校のICT活用だが、実はまだまだ課題も多いと山口氏は言う。そのひとつが高校でのデジタル授業だ。神奈川県の公立高校ではBYOD(生徒が自身のデバイスを持ち込んで使う)の方針が採られており、同校でも高校生および中等教育学校4~6年生はBYODに準じている。その結果、オンラインで同じ資料を配付してもOSやデバイスによって表示がまちまちになるケースが発生しており、対処策は未だ検討中だという。
「BYODを採用することで見えたOSやデバイスの違いによる表示の相違や、持ち帰られたデバイスの生徒の活用状況・デバイスが正確に機能しているかの見える化など、これらの課題を解消していくうえでもCLOMO MDMには期待しています」(山口氏)
インタビューの最後に山口氏は、目指す先とこれからの課題への向き合い方について語ってくれた。
「重要だと感じていることは、トライ&エラーを重ねながら新しい取り組みを続けて、常にベストな教育環境を追求していくことです。そのためには検証を柔軟に実施できる土台が必要です。一例として、我が校では、2019年から新入生のデバイスをWi-Fiモデルからセルラーモデルに切り替えています。そのパートナーとして、NTTドコモにご支援いただいているのですが、何の問題もなくWi-Fiモデルもセルラーモデルも同じCLOMO MDMの管理下で同時に運用ができています。こうした検証がフレキシブルに実施できることもCLOMO MDM を選んで良かったポイントのひとつです。この取り組みによって、生徒のデバイスの状況が以前より見える化され、活用度が向上していることも数値として発表することができました。今後も、柔軟に変化に対応し、何が生徒にとってベストな環境か追求しながら課題と向き合っていきたいと思います」(山口氏)
現場の最前線でデジタル化を推進する山口氏にとって、今後も、環境の変化、技術の革新、生徒や先生の要望など、環境整備への課題が無くなることないかもしれない。だからこそ、ひと筋縄ではいかない学校教育のICT化には、デバイスを生産的に管理できるだけではなく、柔軟に変化に対応し続ける土台として、今後もCLOMO MDMが大きな役割を果たすことだろう。
Information
CLOMO MDMは、圧倒的な使いやすさ、堅牢なセキュリティ、丁寧なサポートを強みとし、9年連続で市場シェアNo,1(※)を誇るMDM(Mobile Device Management)製品です。詳しくはアイキューブドシステムズのホームページをご覧ください。
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お問合せはアイキューブドシステムズの専用フォームより、お気軽にお問い合わせください。
(※)ミック経済研究所「コラボレーション/コンテンツ・モバイル管理パッケージソフトの市場展望」2011~2017年度、「ミックITリポート2020年1月号」2018年度出荷金額実績および2019年度出荷金額予測より
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