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2021年1月25日

教員コミュニティMIEE Talks@Admin.によるICT活用実践集 『図画工作×ICTで子どもの感性を揺さぶる』

【寄稿】
~図画工作の授業でICTを活用することで子どもの創造性を高めたい~
岩本 紅葉 新宿区立富久小学校 主任教諭 図画工作専科

図画工作とは、「表現及び鑑賞の活動を通して、感性を働かせながら、つくり出す喜びを味わうようにするとともに、造形的な創造活動の基礎的な能力を培い、豊かな情操を養う。」ことが目標とされている教科です。

私は、図画工作の授業の中にICTを取り入れることで、子どもたちの表現及び鑑賞の活動の幅が広がり、その活動を通して子どもたちの創造性を高められると考えています。土、粘土、木、紙、クレヨンやパスなど、図画工作の授業で使用する様々な材料や用具と同じように、ICTも材料や用具の一つであると捉えて、授業を行っています。

「図画工作×音楽×ICT 音楽に合わせて動く絵を描こう!」

ICTも材料や用具の一つであると捉えて行った授業について紹介します。前任校(三鷹市立第一小学校)では、三鷹市芸術文化センターの方と三鷹市在住のピアニストである中川賢一さんと連携して授業を行いました。中川賢一さんの演奏を鑑賞し、そこからイメージを膨らませ、そのイメージを絵に表す授業を行いました。この取り組みを3年間続けました。

最初の年は、5年生の子どもたちが、中川賢一さんの生演奏を鑑賞して曲のイメージを膨らませ、今まで学んできた画材を組み合わせて絵を描きました。自分が描いた抽象画を中川賢一さんに即興で曲にしてもらったり、ピアノが響く様子を耳だけではなく肌で感じたりする体験を通して図画工作と音楽のつながりを体験しました。

そして、翌年は子どもたちの創造性を更に高めさせるために、「The Moving Pictures!!」と題し、音楽に合わせて動く絵を描く授業を行いました。この授業では、「Viscuit」を使って動く絵を描きました。「Viscuit」とはとても簡単なプログラミング言語です。メガネという仕組みたった一つだけで単純なプログラムからとても複雑なプログラムまでつくることができます。アニメーション、ゲーム、絵本などを簡単につくることができるため、図画工作の授業の実践も増えています。

子どもたちは、前年度に音楽を絵に表す経験をしているので、その経験を活かして音楽のイメージを広げて動く絵を描きました。高学年になると「絵を描くよりも工作の方が好き」「自分の絵に自信がもてない」という子どもが増える傾向にあります。プログラミングを取り入れた新しい描き方を経験させることで、苦手意識をもっている子どもでも絵を描く楽しさを感じてほしいと考えました。

「Viscuit」を使って絵を描くことで、描いたり消したりしてつくり変えることが簡単にできます。失敗を恐れてしまう子どもでも、様々な表現方法を試したくなる子どもでも、納得がいくまで何度もやり直すことができました。また、アクリル絵の具のようなはっきりとした色合いから、透明度を高くして水彩絵の具のような色合いを表現できるため、自分のイメージに合わせて様々な色合いまで表現する事ができました。そして、友達の作品をPCの画面上でいつでも相互鑑賞することができるため、互いの作品のよさを共有したり、新しい表現を発見したりできました。

「ICTを活用する事で、自分たちの作品を多くの人に見てもらうことができる」

5年生が描いた絵(静止画)も、6年生が描いた動く絵も、三鷹市芸術文化センターで行われたコンサートで、コンサートの本番中にプロジェクターでステージの壁面に大きく投影していただきました。

その後、そのデータをPowerPointで再編集し、プロジェクションマッピングにして校内の展覧会で発表をしました。体育館のステージ上に発泡スチロールで大きな城をつくり、その城に映像を投影しました。大きな城いっぱいに作品の映像が投影された瞬間、会場からは感嘆の声が上がりました。多くの方からのフィードバックを得ることで、子どもたちの創作意欲を高めることができました。

「低学年からでもICTは活用できる」

今年度、異動となり、低学年から図画工作の授業も受けもっています。今年度は2年生で「Viscuit」を使用しました。国語で「スイミー」を学習した後で、「スイミーが見たせかい」と題し、海の中の世界を描く授業を行いました。たった1回の授業で子どもたちは「Viscuit」で様々な海の生き物を描くことができました。

子どもたちが個人で海の中の世界を表現したら、「みんなの作品が素敵な世界に飛び出していったよ!」と声をかけ、別の教室に案内しました。その教室には、3面の壁面と天井に不織布を貼り、そこにプロジェクターで子どもたちがつくった作品を投影しておきました。その空間に入った瞬間、子どもたちは歓声をあげました。「あ、見て!私が描いた魚だ!」「このたこの動きが面白い!」と、自然と相互鑑賞することができていました。

「ICTで繋がって広がる」


他の学年の子どもたちや他の先生方もこの空間に足を運んでくれました。この空間に感動した6年生が2年生に「素敵な作品を見せてくれてありがとう!」とお礼の手紙を書いてくれたり、音楽の先生が「この空間で『動物の謝肉祭』の『水族館』を演奏してみたい。」と言ってくれたり、担任の先生が「ここで体育の表現をしてみたら面白そう。」と言ってくれたりしました。他の学年、他の先生方とも繋がり、広がっていける可能性を感じました。

「ICTを無理なく使う」

私は普段の図画工作の授業でもICTを使用しています。しかし、ICTを使うことで、教科のねらいから逸れてしまったり、本来学ぶべき内容を学ぶことができなくなったりしてしまうと本末転倒です。普段、身近にあるICTを授業で活用することで、子どもたちは他の文具と同じようにICTを使うことができるようになるはずです。授業の中で無理なくICTを取り入れることで、子どもたちの表現の幅を広げられるのではないでしょうか。

《筆者プロフィール》
岩本 紅葉(いわもと もみじ)
新宿区立富久小学校 主任教諭 図画工作専科
2018年よりマイクロソフト認定教育イノベーター
2018年 東京新聞主催 第21回東京新聞教育賞受賞
2019年 日本教育情報化復興会JAPET&CEC主催「ICT夢コンテスト」にて「文部科学大臣賞」受賞
2020年3月、イギリスのバーキー財団主催、教育界のノーベル賞と呼ばれるGlobal Teacher Prizeの最終候補50名の1人に選ばれる。
SOZO.Ed、Type_T、MIEE Talks@Admin.、美術による学び研究会、LINEみらい財団教員コミュニティーのメンバー

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株式会社TENTO

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