2024年7月18日
【AIドリル導入効果】大分県日田市におけるキュビナ導入効果発表会レポート
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大分県日田市では、学習eポータル+AI型教材「キュビナ」を市内の全小中学校で活用している。正式導入から2年、その導入効果についての検証結果と、導入・活用推進の実践について、6月に開催されたオンラインイベントの内容をレポートする。
イベントに登壇したのは日田市教育委員会 学校教育課 指導係 指導主事 福永 秀幸氏と日田市立大山小学校 教諭 黒木 聖子氏。進行は同イベントを主催したCOMPASSの木川 俊哉 取締役CLOが務めた。
キュビナ導入の背景
はじめに福永指導主事から、日田市がキュビナ導入に至った背景が紹介された。
一人ひとりの教育的ニーズや学習状況に応じた個別学習の実現へ
日田市では、同市における「ICTを活用した学びの基本方針」の一つである「一人ひとりの教育的ニーズや学習状況に応じた個別学習」の実現に向けてキュビナが有効なのではないかということで、2021年度の経済産業省 EdTech導入補助金の活用による試験導入を決めた。
活用していく中で、簡単な操作でワークブック(個別最適な問題集の配信機能)を作成できること、5教科の学習に必要なさまざまな操作に対応していること、一人ひとりの学習データから個人の苦手やつまずき解消に最適な問題を出題してくれることなどの良さを体感したことで、2022年度から正式導入することになった。
効果検証結果
続いて、COMPASSから効果検証の結果が報告された。
【検証方法について】キュビナの利用が学力の向上に与える影響を分析
今回の効果検証は、慶應義塾大学の中室牧子研究室と共同で行われた。回帰分析という統計手法を用いて、キュビナの利用に伴う各指標の変化が学力の向上に与える影響を分析した。
学力の変化を測定するために使用したのは、2021年度と2022年度に実施された「日田市学力調査」(小学校は国算理社の4教科、中学校は国数理社英の5教科)。この2回のテストの正答率の変化と、その間のキュビナの学習ログにどのような相関性があるのか分析を行った。
その結果、キュビナを利用した児童生徒には、学力向上の傾向が見られた。また大きく分けて、キュビナの取り組み量による<量的側面>と取り組み方による<質的側面>の2つの側面から学力変化への効果の傾向を確認することができた。
【検証結果①】量的側面:学力向上とキュビナの取り組み量の相関
量的側面では、小・中の各教科に共通して、キュビナの取り組み量が増えると学力が向上する傾向が見られた。小学校では特に、週あたりの「取り組み問題数」が正答率の向上に影響を与えており、週あたり20問の増加で、正答率が国語では5.2ポイント、算数では7.3ポイント向上した。
中学校に関しては、1年あたりの「取り組み節数」(単元を解き切った数)の増加と正答率の向上に特に相関が見られた。
【検証結果②】質的側面:学力向上とキュビナの利用頻度・習熟度スコアの相関
質的側面では、小・中の各教科に共通してキュビナの「習熟度」が高くなるほど正答率が高くなるという結果を得ることができた。この「習熟度」は一人ひとりの学習データを基に、各単元の理解度をAからDの4段階で判定する指標で、子どもたちが自身の画面上で確認することができるものだ。
小学5年生の国語を例にとると、ある児童の「習熟度」スコアがCからBに上がるとテストの正答率が11.9ポイント伸びる、という傾向を示している。
さらに、キュビナの1週間あたりの「利用頻度」が増えることで学力が向上する傾向も確認された。この結果は一度にまとめて学習するよりも、分割して頻度高く学習することの有効性を示唆している。
取り組みの「量」の向上に加えて、「習熟度」や「利用頻度」といった取り組みの「質」を向上させることで、学力向上の効果をより高めることができる傾向が、今回の効果検証により明らかになった。
トークセッション
検証結果の発表に続いて、登壇者によるトークセッションが行われた。
<検証結果について/ 今後のキュビナ活用推進の大きな後ろ盾に
木川:キュビナの活用が学力向上に寄与するという検証結果について、どのように受け止めていますか。
福永:私も一昨年度まで小学校で担任をしており、日田市のキュビナ導入当初は学校で活用する側にいました。キュビナでは、慣れれば月曜の朝10分程度で1週間の宿題を作成することができ、自分自身の負担軽減に大きく繋がった経験があります。また、学習ログを基に、子どもたちへの個別の声かけをすることもできていました。
そうした経験もありますので、子どもたちの個別最適な学習のためにも、先生方の負担軽減のためにも、キュビナを多くの先生に使ってもらいたいと思い、現在は教育委員会の立場から活用推進に取り組んでいます。今回の効果検証で、キュビナの活用により学力が伸びる傾向というのが確認されましたので、今後の活用推進の大きな後ろ盾として、役立てていきたいと考えています。
学校現場での活用状況/ キュビナで学ぶ算数が好きという肯定的評価が71%
木川:今回の検証データの背景にある実際の活用状況について、詳しく伺っていきたいと思います。
黒木:大山小学校が活用推進校に指定されて1年目の昨年度は、まずキュビナの使い方や特性を知るということから始めました。「誰でもできる」「普段使い」「無理のない活用」という基本方針のもと、キュビナで何ができるかを知るということ、どんな場面でどんなふうに活用できるのか試すこと、それを1年間行ってきました。
そうした試行錯誤の1年を経て、今年度は全校である程度統一した取り組みを行っています。授業では、週末や単元末の練習問題での活用、家庭学習では、月曜日は国語、火曜日は算数というように教科を決めて、少しずつでも毎日取り組むようにしています。
大事なことは、「やりっぱなしやらせっぱなし」で終わらせないことだと思います。例えば「習熟度スコアをAにする」とか、「正答率80%」という目標を立てて、繰り返し解き直しをすることや、正答率が低い問題やつまずきのある子への個別指導を行っていくというようなことも、職員同士それから子どもたちとも確認をしました。
木川:紙ドリルからキュビナへの移行は子どもたちにとっても大きな学びの変化だったと思いますが、どのような反応でしたか。
黒木:私たち教職員に比べると、子どもたちの方が抵抗なくスムーズに移行した、そんな印象があります。昨年度実施したアンケートでは、「キュビナで学ぶ算数が好き(71%)」「キュビナに一生懸命取り組めば算数の力を伸ばせる(95%)」という結果が出ており、子どもたちに肯定的に受け入れられていることがわかります。
今では、ちょっとしたスキマ時間に「キュビナしていいですか」と子どもの方から進んで取り組む様子や、発展学習の中で2回3回と解き直してくる姿も見られます。一方で問題や解説を読まずに「終わらせること」が目的になっている子もいるので、自分のために主体的に取り組んでいく力をつけるということが、今後の課題かなと考えています。
学校現場での活用状況/ 日常的なキュビナの活用により定期試験の点数向上も
木川:日田市内のほかの学校での活用実践についてもお伺いできますか。
福永:市内のある中学校では、昨年度、帯時間や家庭学習において、曜日ごとに教科を決めてキュビナを活用する取り組みを、学校全体で行っていました。
この学校の昨年6月の平均解答問題数は756問と市内平均と比べて2倍以上でした。そうした積極的な活用の結果、1学期の中間テストと期末テストを比較すると、特に社会と理科で大きく点数の上昇が見られたそうです。1月に実施した日田市の学力調査でも、市の平均点を超えた教科が増えたという報告がありました。
別の中学校では、キュビナの「ワークブック」機能を活用して、5教科の授業の初めの5分間の「5分間キュビナ学習」と、週2回、帯時間の15分間で「キュビナテスト」を実施しています。
生徒が授業を理解しやすくなり、学習課題に集中して取り組めるようになったこと。先生は学習ログからつまずきがある生徒をサポートしやすくなったことやテストを作成する労力を削減できて大変助かっているということも聞いています。
学校現場での活用状況/ キュビナの「普段使い」を実現するためには?
木川:キュビナの日常的な活用、「普段使い」のためにどんなことを大切にされていますか。
黒木:推進校だからできる特別な取り組みではなく、あくまでも学校の実態や先生方の取り組みやすさというところを大切にしてきました。放課後の雑談や、校内研修の最後の数分間での実践交流など、「こんな風にやってみたら失敗した」というような失敗も含めての交流を大事にしてきました。
子どもたちに対しても「空いている時間があればいつでも使っていいよ」と声をかけています。何かが早く終わったりちょっとした時間ができたときに、「今日は読書しようかな、今日はキュビナしようかな」と子どもたちが選択できるようになったことが大きいかなと思っています。
福永:キュビナの活用に二の足を踏む先生方にどのように活用してもらうか、スタートのところは難しさを感じる部分ですが、それを解決する手立てとして有効だと考えるのは、組織的に活用すること。
最低限の活用時間の確保をするなど、学校全体で組織的に取り組んでいくことで、操作方法や活用方法について先生方の間で共有される機会が増えてくれば、苦手な先生の困りごとも共有される機会が増えて、お互いにサポートすることが充実していきます。
今年度の日田市学校教育目標では、「1人1台端末の持ち帰りによる家庭学習の充実」という項目の中に「AIドリルの積極的な活用」を位置づけました。学校で作成する学校教育方針の中にもキュビナ活用の位置づけをお願いし、組織的な活用を進めるようにしています。
キュビナ活用の今後/ 子どもたちが自信を持って喜ぶ姿を大切に
木川:最後に今後の展望について教えてください。
黒木:昨年度実施したアンケートに「キュビナでわからない人がいれば解き方を教えている」という項目があったのですが、肯定的評価をした児童が昨年9月の53%から今年2月に78%に増えたということがとても嬉しい変化でした。
個人で行うイメージのあるキュビナ学習で、教え合ったり、一緒に考えたり、友だちとの関わりをつくることができるというのは嬉しい発見だったと思います。
点数の向上だけではなくて、何よりも、子どもたちが意欲的に学習に取り組んだり、わかった、できたと自信を持って喜ぶ姿というのを大切にして今後も活用できたらと思います。
福永:日田市における現在のキュビナの使い方としては、教員側で問題を選んで配信する「ワークブック」、あるいは問題一覧から取り組む範囲を指示する方法が中心になっていて、教員側の「この問題に取り組んでほしい」という意図に基づいたものになっています。
今後は、そうした使い方の中で蓄積されている一人ひとりの学習ログを基に個別最適な問題を出してくれる「5分間復習」の機能も活用していくことで、一人ひとりの教育的ニーズや学習状況に応じた個別学習をさらに進めていきたいというふうに考えています。
木川:福永さん、黒木さん、本日はありがとうございました。
□本セッションをYouTubeで視聴
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