2017年1月11日
「体験と交流」 ロイロノート・スクール ユーザー会 熱く開催
公開授業といえば「見学」、講習会といえば「講演」、交流会といえば「呑み」
というイメージ。では、ユーザー会ならどんなイメージか。先生たちが集まって、事例研究の発表会、が定番かな。
新年早々の7日、東京・品川区の香蘭女学校中等科・高等科で開催された「ロイロノート・スクール ユーザー会 2017 Tokyo」は、これまでにない試みのユーザー会だった。
サブタイトルに「教科別授業実践勉強会」とあるとおり、ロイロノート・スクールを活用した授業実践を参加した教師たちが学習者として体験しながら学ぶという形式。そのため、開会前のホールでは、各自が持参したタブレットやスマートフォンにロイロノート・スクールのアプリをインストールして授業参加の登録を行う姿が見られた。
登録が完了した証として、「本日の目標」をカードに記入して先生に提出。ステージ上の大型画面に次々に回答が表示され、「カードの色がグレーの人は、まだ提出していない人ですよ。回答を送ってくださ~い」と、進行係から催促される場面もり、参加者は「学習者」としての意識を喚起される。
ロイロノート・スクールの利用経験の無い参加者には、Loiloの社員が基本操作をレクチャー。操作画面がシンプルで使い易いのが特徴の一つでもある。
模擬授業前の特別講演には、会場を提供した香蘭女学校の船越日出映教務部長が登壇、「伝統女子校ICTへの挑戦 抜本的改革の裏側」と題して、同校のICT導入の経緯を紹介した。
香蘭女学校は100年を越える歴史があり、その中で培われたものがある。しかし、時代の変化に対応するため新しい学びのあり方も考えなければならない。その一環として「ICTの活用」を進めるため、「情報委員会」を立ち上げて検討やマニュアルの作成、先進校の研究などを行ってきた。2015年に生徒用のiPadを試験導入し、2016年には新中学1年生と新高校1年生にBYOD方式で1人1台のiPadを導入した。
ロイロノート・スクールの利用方法としては、授業中の「資料の配付」「意見、考えの集約」「答の共有」「テストの配付・回収」等の他、これまで終礼で配付していた連絡用のプリント代わりに資料を配付したり、連絡用のメモにも活用しているという。
船越部長は講演の最後に、「ICTを導入し、1人1台情報端末を持たせれば、様々なトラブルが起こります。しかし、学校という所は“問題の起きるところ”という心構えで準備することが必要。ICTの活用は、我が校が目標とする生徒に“協働する力”や“社会の変化に対応する力”を身につけさせるために必要不可欠なもの。これからも積極的に活用していく」と力強く語った。
香蘭女学校では、2019年度までに全校1人1台iPadの導入を順次進めていく計画だという。
さて、ユーザー会の本番「体験と交流」の模擬授業セッションは、1部2部で10教科20枠と盛りだくさん。教科と講師の教師は下記の通り。
国語 1.野中 潤 (公立大学法人都留文科大学) 2.長野健吉 (京都教育大学附属桃山小学校)
英語 1.清水由起子 (香蘭女学校中等科・高等科) 2.岡部憲治 (工学院大学附属中学校・高等学校)
数学 1.林 誠浩 (関西大学中等部) 2.越智規子 (立命館中学校・高等学校)
理科 1.井村洋子 (鴎友学園女子中学高等学校) 2.熊井允人 (日本体育大学柏高等学校)
社会 1.中澤はるか (香蘭女学校中等科・高等科) 2.鈴木映司 (静岡県立韮山高等学校)
HR 1.過足勇良 (香蘭女学校中等科・高等科) 2.久郷哲明・長坂綾子 (日本大学三島高等学校・中学校)
体育 1.井上雅晴 (日本大学三島高等学校・中学校) 2.石館 薫 (日本大学三島高等学校・中学校)
技術・情報 1.工藤由希・佐藤正二 (鎌倉女学院中学校・高等学校) 2.荒谷達彦 (同志社大学附属同志社国際学院初等部)
家庭 1.小泉暁子 (日本大学高等学校・日本大学中学校) 2.大内美代子 (聖徳大学附属女子中学校・高等学校)
音楽 1.春野 海 (京都府立清明高等学校) 2.塚本伸一 (東海大学付属静岡翔洋小学校)
各授業の様子は、ロイロノートのFaceBookで動画が公開される予定なので、ここではロイロノート・スクールの新しい機能として追加が予定されている「シンキングツール」を使用した授業を2つ紹介する。
1時限目は、林 誠浩教諭の数学の授業で「証明のすすめ ~論理の力でピラミッドを建てよう!~」。あらかじめ「仮定」と「結論」を提示し、その「根拠」をシンキングツールのピラミッドチャートを利用して考えるというもの。
トランプカードで組み分けしたグループ毎に異なった課題が提示される。ピラミッドチャートに貼り付けるカードは、結論「ピンク」、根拠「黄色」、仮定「水色」と決められ、ロイロノート・スクールを使って自分で色づけしながら、ピラミッドチャートに配置していく。紙のピラミッドチャートなら、色分けした付箋を貼っていくイメージだろう。
個人で考えた後、グループで検討する。グループで結論をまとめたら、代表が他のグループに出向いてプレゼンテーションする。まとめは、ルーブリックにしたがった相互評価を記入して終了。
2時限目は、長野健吉教諭の国語で、めあては「説明文についてのこれまでの学びと、自分の考えをつなげて論理的に書こう」という小学校4年生の授業。「シンキングツール」のイメージマップを使って、「日本人はなぜ正月におせち料理を食べるのか」を、論理的に考察するというもの。
ロイロノート・スクールを使った長野先生の授業は、テンポもリズムも素晴らしく、難しい論理的な思考手順が分かり易く展開され、元々小学校4年生を対象にした内容だと言うことを忘れさせる。社会人の研修にも活用したくなる。
参加者はまず、イメージマップの項目を埋めたりカードを作って「説明の方法」について自分の考えをまとめる。その後、長野先生から「はい。では他の人のイメージマップを参考に、面白い、使えると思ったものを、どんどんパクりましょう」と、ロイロノート・スクールならではの回答共有機能をフル活用して他者の考えを取り入れる。
「見せて~」「教えて~」と言わなくても他の人の意見や考えに触れることが出来るので、短時間で気づきも多く、考えはより深く、多様に、結論に収斂していくのだろう。
模擬授業セッションの後は、ホールに集まって「交流会」。200人近い先生たちがスタンディングで集まって、熱気に溢れた1対1の対面交流。一見すると、アナログで度胸が一番のコミュニケーションに見えるのだが、実は、手にタブレットを持ってロイロノート・スクールで全員が提出した“振り返りカード”をもとに、今日の成果と感想を話し合っている。
次から次へ、カードを繋げて交流が広がっていく。
今回のイベントで、ロイロノート・スクールのユーザー会が新しいフェーズに入ったと感じた。参加しているユーザーのほとんどが実際にロイロノート・スクールの利用者であり、ユーザー会は一方的な学びの場所ではなく、共に刺激し合って成長する場になっているようだった。
参加した先生の振り返りカードには、「生徒がより能動的に授業に関わるためのツールとして大変有効だと感じた。自分も授業で実践したい」、「今回のユーザー会、常に頭や手を動かしていて、まさにアクティブだと実感した」、「多くの教員が集まることで、自分では思いつかなかったような使い方が沢山聞けることが非常に有意義であった」等といった感想が書かれていた。
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