2017年11月15日
さながら”言語教育祭り” 大阪大学にてロイロノートユーザー会が開催
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諸外国に比べ、大きく遅れを取っていると指摘されるわが国の外国語(言語)教育。その危機感を反映してか、2020年の学習指導要領改訂に伴い、抜本的な英語教育改革もなされる予定だ。
例えば、これまで「外国語活動」という枠であった小学校5~6年生の英語が教科化されるほか、中学校では英語での授業実施(原則)、高校では英語討論や発表など進歩的な英語活用力養成へと移っていく計画である。同じく2020年開始予定の新・大学入試における、英語4技能(聞く・話す・読む・書く)判定の導入もその一環であろう。総じて“知識としての英語”から脱却し、「英語を使って何ができるか」を念頭とした教育実践となる。当然、教育者側にもその指導スキルが求められることとなるのは明らかだ。
そうした中、授業支援ソフト『ロイロノート・スクール』で知られるLoiLoは10月28日、大阪大学豊中キャンパス・ステューデントコモンズで、言語教育者限定のワークショップを開催した。
「言語教育はスマートフォン・タブレットで進化する ―ロイロノート・スクールを使った共創ワークショップ―」と題し、参加者各自が持つ多くの実践事例を共有、ロイロノート・スクールを含むICTコンテンツも活用しながら、新たな授業アイデアを創出しようという試みだ。この日は西日本に台風が接近しており、ときおり激しい雨も降る中での開催となったが、全国から約80名もの参加者が集い、テーマに対する関心の高さがうかがえた。
今回のワークショップにおいて特徴的なのは、英語に限らず広く「言語教育」がテーマになっていることだ。参加者らの担当語学は、英語以外にもフランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、さらには日本語など多岐にわたる。外国人教員の姿も散見された。また所属機関も、小学校から大学、あるいは英会話スクールまで多種多様。垣根のないボーダレスなメンバー構成だからこそ可能な、柔軟かつ新鮮な意見交換がなされ、おおいに盛り上がった。
プログラムは5つのセッションで構成。セッション1は大阪大学・岩居弘樹教授による「多言語演習」のワークショップだ。同教授はドイツ語教授法・ICT支援協調学習を専門としており、明るく親しみやすい人柄も魅力。愛嬌ある“毒”を交えながらの笑いあふれるファシリテートに、会場にいる誰もが次々と引き込まれていく。
演習の手順は以下のとおりだ。まず参加者をインドネシア語・韓国語の2グループに分け、それぞれネイティブスピーカーがファシリテーターにつく。ファシリテーターらは「こんにちは」「名前は○○です」「○○から来ました」「私は○○語の教員です」など、初歩的な会話言語を現地語で教えてくれるので、それを全員で復唱・暗唱する。
ただし、ルールは「書かない(メモしない)」こと。耳に入ってきた音を、聞いたまま口に出すことを徹底する。いわゆるシャドーイングである。あえてインドネシア語・韓国語を対象言語としているのは、英語ほどの馴染みがないからだ。予備知識のない言語を用いることで、参加者らは自らの「耳」を使うしかなくなるという仕掛けである。
続いて、次のようなミッションが課される。「先ほど覚えた言葉を用いて、ランダムに他の参加者10名と挨拶(簡単な会話)せよ」。参加者らは次々に相手を変えて挨拶を繰り返しながらも、学びたての言葉を忘れないように必死だ。その間も岩居教授は「けっこう難しいでしょう?みなさんの生徒は、普段こんな思いを抱きながら授業を受けているんですよ」と、冗談を交えて場を盛り上げる。ある参加者は「変な汗をかいたが、とても楽しい」と笑顔で感想を述べていた。
岩居教授は、この演習のポイントを次のように語る。「発音に多少の間違いがあっても気にせず、とにかく口に出すことが重要」「短時間であっても、それを繰り返すうちに該当言語の耳(いわゆる“英語耳”など)になる」。
もうひとつ重要なのは、演習で得た短期記憶をどのように持ち帰り、自分のものとするかだ。そこで活用できるのがICT。例えばタブレットで録音しておけば、帰宅後も復習ができる。初歩的活用のひとつだろう。しかし、録音によって“音”は分かっても、スペルはどうだろうか。未知の言語に対し、発音のみを頼りに辞書を引くのもひと苦労である。岩居教授によると、そんなときは、音声認識機能を当該言語に設定して発話してみると良いと言う。発音が正しければ、スペルも正しく表示されるため一石二鳥だ。ネイティブ自身に発話してもらった録音データを保存しておくのも良いと言う。
ただし「これはあくまで言語演習の導入部分。ここからどう発展させるかは自分しだい」(岩居教授)だという。
その言葉を受けて行われたのがセッション2だ。「教えて下さい、あなたの実践」というテーマで、参加者各自が行っている言語授業の実践事例を、ワールドカフェ方式でシェアしていく。
ワールドカフェとは討論形式のひとつ。大まかには、まず4名ずつグループを作りディスカッションを行う。しばらくしたら、ホスト役1人を残し他の3人のメンバーはそれぞれ別のグループへ移りまたディスカッションを行う。これを繰り返し行うことで参加者が得られる情報量が多くなる仕組みだ。
岩居教授は、こうした授業実践シェアワークにおいて重要なのは「自分の授業実践を自慢しない」ことだと語る。教員の気持ちで考えれば、創意工夫を重ねて創り上げた授業実践だけに、ついアピールしたくなるのが人の心というもの。しかしそうではなく、あくまで目的は「共有」することである。岩居教授のアドバイスを反映してか、「なるほど!」「それは面白そうですね!」といった声があちこちで飛び交っていた。
続くセッション3では、持ち帰った事例をヒントにしつつ、ホームグループでひとつのミニ授業案を作成、セッション4では隣り合ったグループ同士、模擬授業を行う形で相互プレゼンする。さらに、ロイロノート・スクールを活用して授業案プレゼン動画を全体でシェアし、自由交流を兼ねて気になったグループの授業案を聞いて回る最後のセッション5へと移っていく。
この日作られた授業案は、いずれもユニークな視点が反映されていたのが印象的。
例えば、動画サイトにアップされているCMムービーにオリジナルで英語アフレコを入れる、有名な漫画や映画の名言を英語に訳していく、3つのヒントからそれが何かを推測するクイズ形式、Siriの音声認識を使った会話式など様々だ。近年のアクティブラーニングやゲーミフィケーションの潮流か、生徒が主体的かつインタラクティブに関わりやすい授業案が目立ったのもひとつの傾向かもしれない。それらの授業にICTの親和性が高いのも特徴であろう。
会の終わりに挨拶に立ったLoiLoの杉山浩二CEOは「ロイロユーザー会は毎回趣向を変えているが、今回は初めてワールドカフェ方式を用いてみた。大成功でした。皆さんの楽しそうなキラキラした笑顔が忘れられません。今後のユーザー会も工夫を凝らして行きます。またお会いしましょう!」と締め括った。次回ユーザー会は、1人1台タブレット導入校を集めedcampのようなアンカンファレンス方式(参加者主導でセッション内容などを決めていくスタイル)を用いて活発に議論する会を関東エリアで1月6日に開催予定だ。
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