2021年1月19日
ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ 第5回 「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点②」
「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点②」
新谷洋介(金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科)
「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点①」では、ゲームの利用を取り上げ、ゲームの特徴や、想定されるトラブルを考えました。今回は、トラブルを防ぐための配慮点や、情報モラル教育に活用できる教材を紹介していきます。
ゲームの形態に応じたゲームを止めさせる声掛け例
「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点①」では、ゲームといっても形態によって様々な特徴があることを示しました。ここでは、ゲームの形態に応じたゲームを止めさせる声掛けを考えてみます。
・ゲーム機用(途中から再開可能・SAVE機能)
「次のSAVEまでどのくらい(時間)かかる?SAVEしたら終わりにしてね」
・スマートフォン用(プレイ時間が短い・ログボ)
「あと1回やったら終わりにしてね」
「ログボ取ったら今日は終わりね」
※ログボ=ログインボーナス
エンディングまでたどり着くまで時間がかかるゲームでは、途中で中断できる機能があります。読書も同じようなことが言えると思いますが、区切りをつけやすいところで終われるような声掛けに心がけるとよさそうです。なお、区切りを自分で決めさせることも方法の一つでしょう。
プレイ時間が1分程度のゲームでは、回数を決めて適度に終わらせる声掛けがあるでしょう。ログインボーナスがあるゲームでは、一度取り逃すと取り返しのつかないことがあります。ゲームをやる時間がない時に杓子定規に良し悪しを決めるのではなく、ログインボーナスだけ取って終わりにするといった、子どもの気持ちによりそった関わり方を考えることもあってもよいのではないでしょうか。
オンラインゲームを知る
オンラインゲームは、一人でプレイしているものではありません。友達の家に遊びに行くように、他者とゲームの世界で遊んでいるのです。そのため、家でゲームをしていますが、相手が存在していることに留意が必要です。このような、オンラインゲームならではの特徴があります。オンラインゲームを知るためには、実際にやってみることが一番ですが、なかなかそうもいかないと思います。知るための方法として、ゲームのプレイ日記を書いているブロガーのページを参考にすることや、ゲーム実況をしている動画を参考にすることができるでしょう。
「OCTくんと学ぼう」では、オンラインゲームの下記の特徴がわかるように1週間分のプレイ日記を公開しています。オンラインゲーム上にも現実と同じようなルールやイベントがあることがわかります。オンラインゲーム上でトラブルに巻き込まれないような関わり方も必要です。
日替わり、週替わり、月替わりのコンテンツがある
複数のプレイヤーと共に戦うコンテンツがある
季節のイベントがある
プレイヤーが開催するイベントがある
利用料金や課金の仕組みがある
ゲーム上でも並んで待つ等の現実と同じルールがある
OCTくんの独り言:オンラインゲームの実際
ゲームのやりすぎに関する課題
ゲームを長時間してしまうことについて考えてみましょう。子どもが学校から帰ってきて余暇時間にゲームばかりやっていると、ゲームのやりすぎと評価されることがあります。ゲームを止めさせるにはどうしたらよいのでしょうか。ゲームを取り上げてしまうとよいのでしょうか。余暇時間は毎日やってきます。ゲームがなくなると他のことで時間を埋めなければなりません。結果的に、ネット動画の見過ぎ、SNSのし過ぎなど、他の課題に代わってしまうことになってしまうことが考えられます。
そこで、逆に考えてみましょう。読書や運動、音楽鑑賞等、余暇活動の幅を広げることです。余暇時間は有限です。ゲーム以外のことをやることでゲーム時間が自然に減っていくでしょう。しかしながら、こだわりの強い子どもや、興味関心の幅を広げることが困難な子どももいるでしょう。興味関心の幅は、学校と家庭と連携しながら広げていくことが一つの方法です。また、ゲームのキャラクターやジャンル、内容等をきっかけに興味関心を他に広げる方法もあるでしょう。
なお、睡眠時間を削ったり、隠れてこそこそやったり、ご飯や登校など生活の時間ややらなければならないことを削ってまでゲームをやっている場合は、依存症の傾向がある可能性があると考えられます。依存症は病気の一つです。適切な医療機関に相談しましょう。
ネットですぐに活用できる情報モラル教材
情報モラルの指導は、個々の実態の他にも、ゲームやSNS等のコンテンツの特徴、時間や金銭の使い方等、様々な要因が関係します。まずは、課題を明らかにして、焦点化した指導からはじめてみるとよいのではないでしょうか。
最後に、伝えきれなかった内容や、開発・公開している実際に活用できる情報モラル教材をいくつか紹介します。記事を読んでいただき、興味を持った方に活用していただけると幸いです。
・電子くじ(ガチャ)疑似体験教材「たくさん集めて!水族館」
ソーシャルゲームによる電子くじ(ガチャ)を知るための教材です。自由に使えるお小遣いは有限です。決められた範囲内で、無駄遣いをせずに使用させたいですね。ただし、無駄遣いの基準は人それぞれです。このような言葉では伝えにくい学習を、友達の様子や自分が体験することで学べるものです。
・携帯 de 相性占い
2人の携帯電話番号を入力することで相性が表示される占いコンテンツです。同じ番号で何回か試してみてください。占いの結果はランダムで表示されているのに気が付きます。何のために携帯電話番号を入力させるのでしょうか。個人情報の入力される目的を考えさせ、気づかせるための教材です。
・SNS利用時における危険性に気づくための疑似体験教材
SNS上での詐欺広告や、SNSの乗っ取りの仕組みを段階的に疑似体験することで、気づかせるための教材です。
・OCTくんの独り言:情報モラル
観葉植物の育成日記から、写真に住所が特定できる情報の映り込みや、インターネットの正しい情報の選び方、写真に含まれているExif情報などを知ることができる教材です。その他、ガチャを実際に引く様子、情報モラルに関する情報などを適宜掲載しています。
《筆者プロフィール》
新谷 洋介
金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科
特別支援学校教員、国立特別支援教育総合研究所主任研究員等を経て2020年4月より現職。
情報モラルや障がいのある生徒を対象とした教科用教材を開発し公開している。
OCTくんと学ぼう
イラスト:Atelier Funipo
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