2026年8月26日
分子研、日本初のフルスタック中性原子量子コンピュータ「春海」が稼働
自然科学研究機構 分子科学研究所は24日、大森賢治教授が主導する研究チームが開発した日本初で、世界でも数少ないフルスタック中性原子量子コンピュータ「春海」が稼働を開始したと発表した。
量子コンピュータは世界中で様々な方式による開発競争が進んでいるが、実用化には規模の拡大、計算中に発生するエラーへの対策といった課題がある。これらの課題の克服が期待できる画期的な新方式として近年、急速に世界の産学官で注目が高まっているのが、原子1個1個を量子ビットとして用いる「中性原子方式」。
中性原子方式は、「室温で動作し冷凍機を必要としない」「量子ビットである原子を計算途中に移動させることで任意の量子ビット間に量子もつれ(量子コンピュータの速さの源泉)を実現できる」「アルゴリズムに最適な量子ビット配置をその都度柔軟に設定できる」「量子ビット数を増やすのが比較的容易である」「量子ビットが情報を保持できる時間が長い」などの優れた特徴を有している。
分子研・大森賢治教授は、内閣府/JSTムーンショット型研究開発事業 目標6「誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現」において、「大規模・高コヒーレンスな動的原子アレー型・誤り耐性量子コンピュータ」のプロジェクトマネージャとして、中性原子量子コンピュータの研究・開発を行ってきた。同チームでは、量子コンピュータの実用化を目指し、中性原子方式では日本初、世界でも数少ないフルスタック量子コンピュータを開発し、「春海(しゅんかい)」と命名した。
「フルスタック」とは、ユーザーからの入力を計算装置の駆動信号に変換し、計算を実行・出力するために必要な、複数のレイヤー(スタック)を統合したシステムのことを指しており、私たちが日常生活で活用しているパソコンやスパコンなどもフルスタックシステムにあたる。
この量子コンピュータ内部では、対物レンズでレーザー光を強く集光して発生させた「光ピンセット」によって原子量子ビットを配列上に捕捉し、マイクロ波およびレーザー光を原子に照射することで量子的な計算を行う。
計算結果は、カメラを通じて原子1個1個の蛍光を観測することで読み出される。同フルスタック量子コンピュータ「春海」の開発では、大森ムーンショットプロジェクト内の産学の強固な連携を活用し、分子研が中心となって、ソフトウェアスタックを日立製作所と、そして計算を行う量子処理ユニット(QPU)スタックを米国Infleqtion社と共同で開発した。日立製作所とInfleqtion社はいずれも大森ムーンショットプロジェクトの課題推進者。
同フルスタック量子コンピュータは、初期段階では50量子ビット程度を使用し、その後500量子ビット程度まで規模を拡大する予定。さらに、部分的に外部ユーザーへの公開を行いアプリケーションの開発や量子誤り訂正の実証・高度化を目指す。また、大森教授が創業者兼エグゼクティブアドバイザーを務めるYaqumo社とは、量子コンピュータの社会実装及び高度化の観点から連携を進める予定。
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