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2019年3月5日

iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第10回】デジアナ授業をつくる技

タブレットと紙を融合!デジタル×アナログの授業をつくる技
教育ICTコンサルタント 小池 幸司

「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。

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アナログ派だから使えない?使わなくていい?

「わたしはアナログ派だからデジタルはダメで・・・」そんな言葉をICTに苦手意識のある先生からよく耳にします。電子黒板は操作がよくわからないし使いづらい。やっぱりデジタルよりもアナログの黒板の方が・・・。話を聞くと、たしかに筋が通っているようにも聞こえます。でも本当に「デジタルだから」使えないのでしょうか。

「デジタルorアナログ」から「デジタル×アナログ」へ

「デジタルorアナログ」から「デジタル×アナログ」へ

アナログ派を自称する先生方も、おそらく自宅でテレビを見るかと思います。テレビって、「地デジ(=地上デジタル放送)」というくらいですから、デジタルですよね。でも「テレビはデジタルだから苦手」という人に会ったことがありません。では、電子黒板とテレビとのちがいはどこにあるのでしょうか。きっと、「直感的に使えるかどうか」の違いでしかないのだと思います。

パソコンと比べるとiPadはとても直感的なツールです。子供からお年寄りまで、幅広い年代で使われていることがそれを証明しています。デジタルだからと言って、すべてのものが「使いづらい」わけではないのです。大切なのは、デジタルかアナログかではなく、目的に合ったツールを使い分けられるかどうか。今回は、デジタルとアナログ、両方の“イイとこどり”をする、とっておきの技をご紹介したいと思います。

iPad1台で一人ひとりの解答をクラスで共有

以前に見学した授業で、iPadを使った興味深い国語(物語文)の授業がありましたのでご紹介します。教室にはプロジェクタとiPadが1台のみという環境。子供たちが読解の問題を解いている間、先生は机間巡視をしながら、自前のiPhoneでなにやら写真を撮っています。よく見ると、児童が書いた記述問題の解答を撮影しているようです。

児童の解答用紙を自前のiPhoneで撮影

児童の解答用紙を自前のiPhoneで撮影

答え合わせの時間になると、先ほど撮影した児童の解答がホワイトボードに映し出されました。iPhoneで撮った写真をiPadに送り、プロジェクタで投影する仕組みになっている様子。先生は何人かの解答を見せながら、「この答えはマルだと思う人」「バツだと思う人」とクラス全体に問いかけます。

そして、バツに手を挙げた児童にその理由を聞いていきます。すると、「句読点の位置がおかしい」「漢字がまちがっている」、さらには「字がきたないからバツ」なんて答える子もいました。先生がただ正解・不正解を教えるのではなく、子供たち自身が採点官の立場に立って考えるわけです。

解答を共有することで気づきが生まれる

解答を共有することで気づきが生まれる

おもしろい工夫だなと感心したのですが、これってアナログだけだと難しいですよね。従来の授業のように、児童が自分の解答を読み上げるのでは、句読点や漢字の誤りには気づきません。前に出て黒板に書いてもらう方法もありますが、時間がかかるため1〜2人の解答を共有するのが限界でしょう。でも、iPadのカメラを使えば、児童の解答を瞬時にデジタル化し、プロジェクタで拡大して表示することができます。1人1台の端末や高価な学習支援ソフトがなくても、一人ひとりの児童の解答をクラス全体で簡単に共有することができるのです。

複数の付箋紙を一瞬にしてデジタル化できる「Post-it Plus」

グループ学習のときに、みんなで意見を出し合ったりアイデアをまとめたりするのに付箋紙を活用している先生も多いのではないでしょうか。思いついたことをパッと書き出したり、思考したことをアウトプットしたりするのに、紙(アナログ)の付箋紙はとても有効なツールです。

付箋紙を一括で画像化できる「Post-it Plus」

付箋紙を一括で画像化できる「Post-it Plus」

でも、貼り出した付箋紙をクラスみんなで確認しようとすると、かなり近くまで集まらないと見えません。また、翌週の授業で確認したいと思っても、そのまま保管するのは一苦労です。

そこで、付箋紙とあわせて使ってみてほしいのが「Post-it Plus」というアプリ。ご存知、ポストイットを作っている3M(スリーエム)さんが出しているアプリですが、正方形の色紙であれば代用することが可能です。

・Post-it Plus:AppStore

読み込んだ付箋紙はグループわけできる

読み込んだ付箋紙はグループわけできる

「Post-it Plus」は、床に並べた数十枚の付箋紙を一瞬で画像化することができるアプリ。読み込んだ付箋紙は、プロジェクタや電子黒板で投影して1枚1枚見ることができます。

またiPad上でグループ分けすることも可能です。読み込んだ付箋データは、iPadに保存できるのはもちろんのこと、メールに添付してパソコンや別のiPadに送ることもできます。「10年前の6年生のクラスではこんな意見が出てたよ」なんて、時間を超えて再現することができるのも、デジタルならではの利点ですね。

【本日のワーク】AC Boardで解答用紙をスキャンしてみよう

「Post-it Plus」は認識率も高く、とても使い勝手がいいアプリですが、正方形の色紙しか認識できません。そこで、今回のワークでは四角形(長方形を含む)を認識して一括で画像化できるアプリ「AC Board」をご紹介したいと思います。色紙である必要もないので、普通の問題プリントの枠内(解答欄)に書かれた答えを簡単に画像データ化できます。

・AC Board:App Store

四角形を認識してスキャンできる「AC Board」

四角形を認識してスキャンできる「AC Board」

アプリを起動したら、まず右上の「+」ボタンをタップして新しいボードを作成します。続いて、画面下のツールアイコンの中から、長方形に+マークの付いたアイコンを押して「白紙のカード」を選択しましょう。付箋紙のような黄色い「カード」ができましたでしょうか。作成したカードは色を変更したりピンチアウト・ピンチインで拡大・縮小できます。また、手書きで絵や文字を書いたり、キーボードで文字を入力することも可能です。

それでは、実際にプリントをスキャンしてみたいと思います。長方形の枠(解答欄)が複数入ったプリントをご用意ください。ペンや鉛筆で解答を書き込んでおくと活用のイメージが湧きやすいと思います。手元に生徒の解答が入ったプリントがあればそれを使っても構いません。

プリント上の解答を切り取ってスキャンできる

プリント上の解答を切り取ってスキャンできる

長方形に+マークのアイコンをタップして「スキャンして追加」を選択してください。「カメラからスキャン」を選ぶと撮影モードに切り替わります。なるべくプリント全体が収まるように正対して撮影しましょう。「写真を使用」を押すと、四角形と認識された部分が緑色で表示されます。四角形の頂点と緑色の部分がずれている場合には調整しましょう。最後に「完了」をタップすれば、緑色の部分がスキャンされ、ボード上に画像として表示されます。

なお、この「AC Board」には4台のiPadをつないで、1つの大きなボードにする機能もあります。4人でカードや画像を送り合ったり、1人のカードをみんなにコピーしたりといったことも可能です。実用的かどうかはさておき、なかなかおもしろい機能ですので、iPadを4台お持ちであれば、ぜひ一度試してみてください。

どちらか一方ではなく、かけ算の考え方こそが「授業力」のベース

企画を考える仕事をしている人は、思考を整理するのに紙を使っているという話をよく聞きます。私も講演や研修のスライドを作るときには、まず紙のシートで手書きの絵コンテを作ってから、パソコンに向かうようにしています。アナログにはアナログ、デジタルにはデジタルの利点があり、自然とそれを使い分けているわけです。これって授業の中でも同じことですよね。「アナログ or デジタル」ではなく「アナログ×デジタル」。これこそが、これからの学びを作る先生たちの「授業力」のベースになっていくのではないでしょうか。

【筆者プロフィール】
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小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。

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