2020年12月14日
ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ 第4回 「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点①」
「子どもたちを取り巻くゲーム環境の特徴と配慮点①」
新谷洋介(金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科)
「青少年のネット利用実態把握を目的とした調査 2018年度最終報告書(LINE2019)」によると、「あなたは携帯電話等をどのような目的で使うことが一番多いですか。」の質問に対して、特別支援学校高等部生徒の回答は、割合の高い順に、ゲームをする(21.5%)、メッセージサービス(17.5%)、音楽を聴く(14.7%)となっており、ゲームをする割合が高い(高等学校の生徒は、「メッセージサービス」、「SNS」、「ゲームをする」の順)ことがわかります。
今回は、子どもたちを取り巻く環境の中からゲームの利用を取り上げ、ゲームの特徴や、想定されるトラブルを考えていきます。なお、ゲームを否定的に考えることがありますが、読書や映画鑑賞、音楽鑑賞などの余暇活動のひとつとして、ゲームがあるという考え方で記事を書いていきます。
1 ゲーム機でできること
スマートフォンでは、インターネットを閲覧すること、YouTube動画を視聴すること、写真や動画を撮ること、SNSに投稿すること、オンラインゲームをすること等ができます。ゲーム機ではどうでしょうか。ここで挙げたもの全てできるのです(ゲーム機によりできる機能とできない機能がある)。さらに、スマートフォンと連携させて、音声でやりとりしながら対戦ゲームを楽しむこともできます。
このように、ゲーム機はインターネットに繋がることで、様々なことができるようになりました。子どもがスマートフォンを持っていないからネットトラブルには無関係ということにはならなそうですね。
① インターネットの接続
ゲーム機をインターネットに接続する方法は、自宅のWi-Fiに接続する方法があります。その他にも、公民館等の公共施設、コンビニエンスストア、ファーストフード店、スマートフォンのテザリング、友達宅のWi-Fiなどたくさんの方法があります。インターネットに接続する方法が至る所に存在していることを認識することが大切です。
② ゲームソフトの購入
ゲームソフトの購入方法の特徴を考えてみます。Nintendo Switchを例にすると、次のような購入方法があります。
・店頭等でゲームカードを購入(ゲームカードを本体に差し込む)
・店頭等でダウンロードカードを購入(本体にダウンロードする)
・ゲーム機上でオンライン決済(本体にダウンロードする)
ゲームソフトの購入方法から、ゲームソフトの存在が、ゲームカードのような実物がある状態と、ダウンロードするような実物がない状態があることがわかります。
ゲームカードのように実物があることで、購入した商品のひとつという位置づけが明確になるでしょう。反面、ゲームカードは小さいため、紛失してしまう危険性があります。また、友達との貸し借りのトラブルに発展することも考えられるでしょう。
ダウンロードしたものは、ゲーム機本体に保存されているため、ゲームソフトを紛失することや貸し借りのトラブルに発展することはありません。しかし、実物として存在していないため、購入した商品という位置づけが不明確になってしまうことが考えられます。また、ゲームソフトは、ゲーム機のみで購入と入手ができます。支払情報を保存している場合は、勝手に購入されることも考えられます。また、友達にゲーム機を貸して、友達が購入してしまうトラブルも想定できます。支払情報の保存をしないようにすることが大切になるでしょう。
2 ゲームの形態と特徴
ゲームといっても様々な形態があります。いくつかのゲームの形態の特徴と、特徴から考えられるプレイ時間の配慮をまとめ、次の表に示します。
ゲームの形態 | 特徴 | プレイ時間の配慮 |
ゲーム機用 | 一定の終わりがある(エンディング) 比較的時間がかかる |
途中から再開可能なため、計画したプレイが可能 |
スマートフォン用 | アイテム等を集めることが目的のため、終わりがない 毎日プレイすることでのログインボーナス 1プレイ当たりの時間が短い |
1プレイ当たりの時間が短いため、計画したプレイが可能 毎日プレイすることでのログインボーナスに配慮 |
オンライン | 終わりがない 時間を費やすほど強くなる 地球時間の特定の時刻や期間しかできないイベントがある |
時間を費やすほど強くなる、他のプレイヤーとコミュニケーションを取れることから、依存の可能性が高い 地球時間との連動したイベントがあること、他のプレイヤーとの約束がある可能性 |
位置情報を利用するオンライン | 位置情報を利用したオンラインゲーム 位置情報を利用しているため、特定の場所に実際に出向く必要がある オンラインゲームに特徴は似ているが、特定の場所に出向くため、オンライン上だけではなく、リアルマナーの注意が必要である |
モンスター等がいつ、どこで出現するかわからない、また、一定の時間しか出現しないことがあるため、突発的にプレイしないように配慮 |
3 子どもの取り巻く環境を知ることが大切
ゲームを知るためには、ゲームを実際にやってみることも一つの方法ですが、子どもとゲームを介して、どんなゲームをやっているか、どんなキャラクターが好きなのか、どのくらい強くなった・うまくなったのかなどの、コミュニケーションを取りながら、子どもの取り巻く環境を知っていくことが大切ではないでしょうか。
《筆者プロフィール》
新谷 洋介
金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科
特別支援学校教員、国立特別支援教育総合研究所主任研究員等を経て2020年4月より現職。
情報モラルや障がいのある生徒を対象とした教科用教材を開発し公開している。
OCTくんと学ぼう
イラスト:Atelier Funipo
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