2022年4月27日
AIが人物を自動追尾するリモートカメラで臨場感あるハイブリッド授業/昭和女子大学附属 昭和小学校
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オンライン授業やハイブリッド授業が広まってきた昨今。先生がカメラの前から動かずに進められる授業では固定カメラで不便を感じることはないだろう。しかし、小学校で行うハイブリッド授業などの場合、対面で授業を受けている児童を見て回りながら、オンラインで参加している児童に気を留める必要もある。そうした場面でも頼もしい機器がAI自動追尾機能付きリモートカメラ「AVer DL30(ディエル サンジュウ)」だ。同機の活用をはじめた昭和女子大学附属 昭和小学校の大熊 太郎 教諭と加藤 悦雄 教諭に話を聞いた。
その場にいるような臨場感
東京都世田谷区にある昭和小学校。児童数は650名ほど、1学年は全3クラスで18学級ある。2021年4月に児童1人1台のiPadを導入した。大熊教諭(4年生、道徳科主任)は、同校で9名からなるICT推進チームメンバーとしてICT機器の先行実践など実験的に行う機会が多いという。現在、同校ではAI自動追尾機能付きリモートカメラ「AVer DL30」(アバー・インフォメーション提供)を1台導入している。4年生の国語において、同カメラを活用したハイブリッド授業を実施。その様子を撮影した動画を見せてもらった。
この授業では、教室の後方に「AVer DL30」を設置し、その映像を教室の前方左側にある大型モニターに映し出していた。この日はZoomを介して自宅からオンラインで参加している児童が3名いる状況だった。
「私があちこち動いて児童の席の近くでしゃべることもあるので、「AVer DL30」を教室の後ろに置きました。オンラインで参加している子どもたちにとっても教室全体が見えるのでいいかなと思いました」と大熊教諭。
その言葉のとおり、ホワイトボードの左右に先生が移動する動きに合わせて、リモートカメラがその姿を追っていく様子が窺える。先生が教室の前方から離れたとしても、姿をそのまま捉えてズームが寄っていく賢さだ。まさに、先生を“ロックオン”している。
リモートカメラ「AVer DL30」は、人物の検出機能により人の形をAIで認識し、特定のターゲットやエリアを自動的に追尾する機能を持つ。ターゲットとなる先生は自動追尾を維持させるための特別な装置を身につける必要はない。電源を入れた後、AIが最初に捉えた被写体を認識して自動追尾が標準でスタートするため、手間がなく使い方は拍子抜けするほど簡単。ボタン1つで、いわば「ワンオペレーションの自撮りカメラ」の完成だ。
教室の空気感まで伝わる優れた追尾と光学12倍ズーム
教室中を先生が動き回ってもしっかりと追尾。途中、児童が横切ったり遮ったりしても先生を捉え続けている。その理由は、肩の位置など身体の形状から取り込んだ座標やどちら方向に向かっているかといったベクトルなどの情報をAIがインプットしていくため。たとえマスクをしていても背中だけの姿になっても追いかけられるのだという。
「AVer DL30」の追尾機能には2つのモードがある。1つが「プレゼンターモード」。追尾するターゲットの全身または上半身が画面のセンターに入るように自動的に調整される。ターゲットの変更もリモコン操作で簡単に行える。
もう1つが「ゾーンモード」。ターゲットを自動で追尾しつつ、あらかじめ決めておいた撮影位置にターゲットが入ると画角が変わる。プレゼンターモードとは違い、黒板などの共有・配信したいコンテンツに注目させる事ができる。
「子どもたちのグループワークをそれぞれ回り必要な助言を与えるといった授業でしたが、リモートカメラはずっと追いかけてくれました」と大熊教諭。「これまでは主にZoomを使っていましたが、Zoomは1つのアカウントで2つの画面に入ることもできるので、たとえば1つは『AVer DL30』で私を追いかけてもらい、もう1つは他のカメラを定点として使ってホワイトボードをずっと映したり、または資料や画面共有したいものを表示したりといった使い方もいいですね。“動”と“静”を併用することで、実際に教室にいるのとほぼ質の変わらないオンライン授業を提供できるだろうと思います」。
グループワークでオンライン参加の児童が一員のグループには、イヤホンを繋いでやり取りすることもしたという。先生が回っているところや教室全体が画面を通して見えるため、オンライン参加の児童もクラスメイトが今何をしているのかが分かったり、自宅からでも教室との一体感を感じられたりしたようだ。オンラインで参加する子どもたちにとって、画面が無人状態になれば集中力が途切れる原因になりやすいだろう。学ぶモチベーションを繋ぎとめる観点からもメリットが高いと言えそうだ。
「AVer DL30」は光学12倍ズームの高画質カメラも搭載している。ゆがみのないスムーズな動作で、横長の黒板全体が入るような広角撮影から、先生を中心とする中・近距離の撮影も可能。人物の上半身が中心になるようズームしていくパターンと、全身を中心にズームしていくパターンの2つがあり、どちらかをAIに実行させることができる。高精細な画質のため、遠くからでも板書の文字が鮮明に映し出せることも魅力だ。
各教科や行事の特性に応じた活用に期待
各教科や行事などの特性に応じて幅広い活用ができるだろう。たとえば理科では実験、家庭科では調理実習の手順など先生の手元を映したり、体育での創作ダンスや跳び箱など人物の動作を追いかけながら撮影したりするシチュエーションにも適していそうだ。
運動会などイベントにも効果を発揮するだろう。オンライン配信や記録用として教育機関でも動画撮影する機会が増えている中、従来であればビデオカメラ3台をグランドに配置し、それぞれに人を付けて操作するといった必要があったことも、「AVer DL30」があれば人員を複数かけなくて済む。同校では実際に卒業式で「AVer DL30」を活用したという。「1」を押したらこちら側、「2」を押したらこちら側とカメラを振る位置をあらかじめ設定したことで、広角からズームまで1名の担当者によるボタン操作のみで撮影が簡単にこなせたという。
大熊教諭は公開授業にも使ってみたいと話す。「他校の先生たちと集まって研究会を行うことも今はなかなかできないですが、いずれ自分の授業公開をする時にこのリモートカメラを活用して『子ども目線の映像を中継する』ことをしたいです」と具体的なイメージが膨らんでいる。「AVer DL30」を児童の席にポンと置くだけで、子ども目線での授業公開も可能だ。
加藤教諭は児童に応じた授業提供にも期待を寄せる。さまざまな要因で登校したいけれどできない児童に対して、リモートで授業参加する機会の場として学力の保証に繋げられるのではないかと話す。学校や授業が面白いと思えて、かつしっかり学べる。そうした新たな仕組みも構築できそうだ。
ICT機器の掛け算で新しい価値を生む
同校が学校全体で取り組んでいるICTを活用した総合学習。子どもたちに社会と繋がる経験を持たせたいと、専門家など外部の人たちとZoomで繋いで話しを聞き、児童自身が考え行動するための新しい気づきや深い学びの獲得にICT機器を役立てている。こうした実践などで、大熊教諭は昨夏、日本デジタル教科書学会の最優秀新人賞を受賞した。
コロナ禍の経験があったからこそ、ICTを活用した授業の選択肢が増えた。そのことをポジティブに捉えていると話す加藤教諭。大熊教諭もオンライン授業やハイブリッド授業でこれまで試行錯誤した中で、「子どもたちが求めているのは繋がり」だと気づいたという。どのような状況でもお互いの存在を意識し合える環境の大切さ。コロナ禍で先生たちが体験的に見出したことだ。
「普通教室にこれが1台あったらいいですね。ちまたにICT機器はどんどん増えてきていますが、私がよく思うのは足し算ではなく掛け算をするとより効果が出る。Zoom×『AVer DL30』でも、定点カメラ×『AVer DL30』でも相性がいいでしょう。組み合わせ次第で可能性が広がると思います。今までになかった新しいタイプのツールなので、授業づくりで“こうしたらもっといいな”と考えながらできると思うと本当にワクワクします」(大熊教諭)。
その場に近い臨場感で、離れている児童同士の繋がりも作り出せる「AVer DL30」。様々な授業実践で知見がさらに増え、児童にとっても先生にとってもメリットが多く生まれることに期待したい。
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