2019年12月3日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第19回】プログラミングの準備
まもなく必修化!iPadで「プログラミング教育」の準備を
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
2020年度からの必修化に向けて準備すべき2つのこと
2020年度、いよいよ小学校の「プログラミング教育」が全面実施を迎えます。巷ではプログラミング教室の人気が高まっていて、電車や駅の広告、テレビCMでも目にするようになりました。一方、必修化を目の前にして、学校の先生たちの意識は二極化しているように感じます。「出遅れ感」を抱いている先生も少なくないのではないでしょうか。
学校で「プログラミング教育」を開始する上で準備しておかなければならないものが2つあります。1つはプログラミングができる「環境」。ハード面は先生個人の力でどうこうするのは難しいですが、ソフト面はぜひ準備しておきたいところです。プログラミングのツールは無料で使えるものがたくさん出ています。
そしてもう1つは先生自身の「やる気」です。「後回しにしていたら今になってしまって・・・」という先生のために、今回はiPad1台でできるプログラミング教育のファーストステップを紹介します。必修化までの限られた時間を使って、「環境」と「やる気」をしっかり整えていきましょう。
まずは基本となるプログラミング言語「スクラッチ」をCheck!
「スクラッチ(Scratch)」はMITメディアラボが開発した「ビジュアルプログラミング言語」の1つです。2019年1月に正式リリースされた最新バージョン(Scratch 3.0)では、パソコンだけでなくiPadの「Safari」にも対応。アプリをインストールすることなく、Webサイト上でプログラミングをすることができます。
「作ってみよう」をタップするとプログラム作成画面になります。言語設定が英語になっている場合は、地球儀のアイコンをタップして設定を「日本語」か「にほんご」に変更します。通常、プログラミングは呪文のような命令文をキーボードで入力していきますが、「スクラッチ」では1つ1つの命令がブロック状になっていて、それら組み合わせることでプログラムを作っていきます。
例えば、「10歩動かす」のブロックに「ずっと」のブロックを組み合わせると「ずっと・10歩動かす」という命令文になります。これをタップ(実行)すると、ネコのキャラクターがプログラム通りに右に移動。さらに、「もし端に着いたら、跳ね返る」のブロックを追加すると、ネコが左右に行き来するプログラムができあがります。
このように、「スクラッチ」を使うと直感的にプログラムが作れて、すぐに実行結果を確認できます。また非常に奥が深く、複数の命令を組み合わせて複雑なプログラムを組むことも可能。本格的なゲームや動きのある電子紙芝居など、アイデアしだいでさまざまなプログラミング作品が作れます。
気をつけることとして、最新版の「スクラッチ」を使うには、必ずインターネットにつながっている必要があります。また作成したプログラムを保存するのに、一人ひとりユーザー登録をしなければなりません。「教師用アカウント」を取得すれば、メールアドレスの登録なしで児童用アカウントが作成することができます。
・Scratch – Educators(教育者向けScratch)
「スクラッチ」をベースにしたお手軽プログラミングアプリ
「スクラッチは良さそうだけどもっと簡単にできないの?」という先生に、おすすめのiPadアプリを2つご紹介したいと思います。ともに「スクラッチ」をベースにしていながら、インターネット環境もユーザーも登録なしで使えますので、授業で手軽に使うにはもってこいです。
1つ目のアプリは「スクラッチジュニア(ScratchJr)」です。その名の通り、未就学児から低学年向けに作られたアプリで、いわば「スクラッチ」の入門編。ブロックを組み合わせてプログラムを作る点は同じですが、ブロックの数が限られていて、背景画像などが豊富に用意されているのが特徴です。
2つ目は「ピョンキー」です。ネコではなく、ウサギとサル(モンキー)をかけあわせたピョンキーがメインキャラクター。旧バージョンの「スクラッチ」(Scratch 2.0)と互換性があり、本家スクラッチでできることは、ほぼ「ピョンキー」でも実現可能です。
【本日のワーク】まずは「プログラミング的思考」を体感すべし!
「プログラミング教育」の導入にあたって、イマイチわかりづらいのが「プログラミング的思考」という言葉。「◯◯的」という時点で、なんともあやしい雰囲気を感じますよね。でも、これを身につけることが「プログラミング教育」を行う目的の1つですから、理解できないままでは始められません。
そこで今回のワークでは、この「プログラミング思考」を先生自身に体感してもらおうと思います。使用するのは「ピュア・プログラミング」というアプリ。AppStoreの説明書きに「小学1年生でも使える」と書かれているほどのアプリですので、パズル感覚で気軽に楽しんでみてくださいね。
・ピュア・プログラミング – ネズミとチーズと迷路とプログラム:App Store
ルールはいたってシンプル。ねずみさん(マイクロマウス)をチーズのところに連れていけばステージ(めいろ)クリアです。ただしこのねずみさん、プログラムで命令した通りにしか動きません。そのためのプログラムを右側の画面で作っていくわけです。ではさっそく「めいろ1」を一緒に解いていきましょう。
「もし」の右側の「( じょうけん )」をタップするといくつかの選択肢が出てきます。今回は一番上の「( まえに すすめる )」を選んでみます。続いて、「なら」の右側にある「 { こうどう } 」をタップ。3つのアクションが出てきますので、「 { まえに 1マス すすむ } 」を選択してみましょう。
すると、「もし( まえに すすめる )なら { まえに 1マス すすむ } 」という命令文ができあがりました。左下の「いけ!」をタップするとプログラムが実行されます。命令通りにねずみさんが動いて、チーズまでたどりつけましたでしょうか。
「あれ、2マス進めるなら、条件文を2回書くんじゃないの?」と思われた方もいるかもしれませんね。でも、よく見てみると、先ほどの条件文が「くりかえす { ・・・ }」で囲われています。つまり、「もし〜なら・・・」という命令は、ゴールにたどりつくまで繰り返し実行されるわけです。
条件文は最大5つまで設定することができます。1つ目の条件文に当てはまらない場合には、次の条件文に。そこでも当てはまらない場合は次の条件文にいきます。条件に当てはまると「 { こうどう } 」で選んだアクションを行い、また一番最初の条件文に戻る仕組みです。
最初のうちは余裕で進めると思いますが、「めいろ10」あたりからだんだんと難しくなってきます。後半は大人でもかなり頭を悩ます難問揃い。「7つの (じょうけん) 」と「3つの {こうどう} 」をどう組み合わせるか。たったこれだけのことですが、すごく頭を使っていることに気づくはず。まさにいま、脳が「プログラミング的思考」をしているわけです。
プログラミング教育の秘訣は「わからない」にあり
「ピュア・プログラミング」には解答が付いていません。正解は1つではないですし、そもそも全問解くことが目的ではないのです。「プログラミング教育」も同様。大切なのは、子供たちが楽しみながら「考える習慣」をつけることです。だから先生だって、すべてを知っている必要はありません。「先生もわからないな。一緒に考えてみよう」でいいのです。子供たちと一緒に先生自身もプログミングを学べる授業づくり。ぜひ今日から準備を進めていってください。
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。オンラインショップ「先生のためのICT活用塾」を運営。
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