2022年4月21日
続・iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第13回】BYODにおけるICT活用法
【第13回】武田 淳先生(国立仙台高等専門学校)
生徒のスマホも活用!? BYODにおけるICT活用法とは?
「わが校でも今年から1人1台のタブレット端末を導入します」。突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。iPadを活用した学びを実践している先生たちの活用事例をもとに、ICTが苦手な先生でも取り組める具体的な活用方法をご紹介します。
「BYOD」と「CYOD」って一体なにがちがうの?
「BYOD」という言葉を聞いたことがありますか?「Bring Your Own Device」の略で、もともとは私物端末を会社に持ち込んで使うことを意味するビジネス用語でした。それがいまから10年ほど前、先進校で1人1台のiPadが導入されはじめると、徐々に学校でも使われるようになりました。
当時は端末は学校で用意するのが主流で、家庭負担で購入した端末を学校で使用することを「BYOD」と呼びました。実際には学校で指定した条件の端末(画面サイズを指定したiPad)を選択購入するのが一般的でしたので、「CYOD」(= Choose Your Own Device)と呼ばれるスタイルになります。
一方ここ数年は、本来の意味での「BYOD」スタイルを導入する学校も増えてきています。生徒が自由に購入したPCやタブレット、さらには生徒のスマートフォンを授業で活用してしまおうというわけです。端末がバラバラの状況の中、いったいどのような授業が行われているのか気になりますよね。
そこで今回は、学校管理のiPadと生徒のスマホやタブレットを活用した授業に取り組まれている、国立仙台高等専門学校の武田淳先生にお話をうかがいました。武田先生はAppleが認定する教員ADEでもあります。「BYOD環境」でiPadを活用するポイントはどこにあるのか。その実践から探っていきたいと思います。
全国の高専に先駆けて「LMS」を導入したICT先進校
「高専ロボコン」でお馴染みの高等専門学校は、全国に57校(国立51校、公立3校、私立3校)、61のキャンパスがあり、総学生数はおよそ58,000人におよびます。また卒業後の進路は、大学進学(高専専攻科または大学3年次に編入)と就職がほぼ半々、理工系学科を主体とした5年制の高等教育機関です。
そんな高専の中で1998年に初めてLMS(学習管理システム)を導入したのが国立仙台高等専門学校です。その「Blackboard Learn+」は現在では全国高専共通のLMSとして使用されています。学生たちは学内外を問わず、いつでもLMSにアクセスが可能。教科によっては他校の授業資料も参照できるというから驚きです。
また、「Zoom」や「Teams」、「Google Meet」などのウェブ会議システムと「Blackboard Learn+」を組み合わせて、新型コロナ対応のための遠隔授業にもいち早く対応したとのこと。学校管理のiPadを150台保有しており、学生のスマホやタブレット等と補完しあいながら授業で活用しているといいます。
「オンライン・どこでもドア」プロジェクトとは?
「入学したばかりでデジタルデバイスにまだ不慣れな学生には『Quizlet Live』のチーム戦がとても効果的です」。英語の授業でのICT活用について武田先生はそう話します。個々で単語学習をする「Quizlet」とちがい、チーム内でコミュニケーションを取りながら対戦するため、取り残される学生がいなくなるのだとか。先生方にとっても、事前準備が比較的簡単にすんでしまうというメリットがあります。
・「Quizlet:単語カードで学びましょう」:App Store
また、360度写真を使ってバーチャルツアーをつくる実践にも取り組まれています。それまで毎年留学生を交換派遣していた海外姉妹校との交流活動がコロナ禍ですべてオンラインになりなったことを機に、7時間の時差があるドイツFFB工業大学と現状を伝え合うプロジェクトを考案。「Marzipano」(マルツィパノ)というウェブアプリを活用したそうです。
・Marzipano – a 360° viewer for the modern web
「『Marzipano』は360度撮影された任意の天球写真をワンクリックでリンクさせるもので、学生たちはこのプロジェクトを“オンライン・どこでもドア”と呼んでいます」と武田先生。
「Marzipano」を使えば、FFB校と仙台高専の教室や図書館、実習工場の様子を一目で見比べることができるといいます。
もともとは2校ではじめたプロジェクトでしたが、担当教員間のつながりで最終的にはドイツ、フィンランド、オランダ、台湾など7カ国8大学を結んだ活動に発展。
「タブレット同好会」が活動の主体となり、紹介する英文も学生たちが原案を用意、どの設備の写真を撮るかといったミーティングも自主的に開催されたそうです。
【本日のワーク】音声入力機能で英語の発音を練習!
「新入生を対象とした導入段階で、デバイスに慣れてもらうためにiPadの『メモ』を紹介しています。タッチタイピングに続いて音声入力の説明をすると、学生たちは夢中になって音声認識にトライします」。今回は武田先生が授業で行っているこの「メモ」を使った音声入力に挑戦してみましょう。
まずは英語で音声入力をするための準備として、「設定」→「一般」→「キーボード」を開いてください。音声入力がOFFになっている場合にはONにしましょう。音声入力が有効になると「音声入力言語」という項目が表示されますのでそこをタップ。「英語(日本語)」にチェックを入れます。
次にメモアプリを開いて、新しいフォルダを作成します。左下の「+」マークのついたフォルダアイコンをタップすると保存先を聞かれます。今回は「iPad」→「新規フォルダ」を選択してください。フォルダ名に「発音練習」と入れて保存します。これで練習メモを保存する準備ができました。
画面の右側をタップすると編集モードになります。1行目に日本語キーボードでタイトルを入力しましょう。改行したらスペースキーの左にあるマイクをタップ。音声入力モードに切り替わるので、iPadに向かって「私の好きなもの」と話してみてください。ちゃんと音声認識されましたか。
ではいよいよ、英語の音声入力に挑戦してみましょう。キーボードを英字に切り替えてから、マイクをタップ。「I like 〜」「My favorite sport is 〜」と好きもの・好きなことをiPadに英語で話してみてください。最後に、「period」と言うと、ちゃんと「.(ピリオド)」を付けることができます。
武田先生によると「ポイントとしては、慣れたら次は単語だけでなく、改行(new line)や句読点(comma, period, question mark, exclamation mark)、大文字(cap)、顔文字(smiley など)もすべて音声入力するようにアドバイスすると、学生たちはさらに盛り上がります」とのことです。
生徒のスマホ活用で学びの幅が広がる
BYODスタイルの授業を実現するには、ウェブアプリの活用がおすすめです。またLMSなど教材を共有する場所も必要になります。でも、音声入力のように、ほとんどの端末にある機能を使えばそんなに難しくはありません。1人1台のiPadを導入している学校でも、プラスアルファとして生徒のスマホを授業で活用してみると、学びの幅が広がるかもしれませんよ。
【実践者プロフィール】
国立仙台高等専門学校 教授
武田 淳 先生
慶應義塾大学文学部英米文学専攻卒。県立高校を経て1994年から現任校。県立高校時代から職員室にPCを持ち込み「pen-palからkey-palへ」をモットーに海外姉妹校とのメール交換を活用した実践授業を展開、これが現在の諸活動の礎となった。2014年に反転授業を導入、現在はほぼ全ての授業を反転形式で実施している。自他共に認めるマック・フリーク。ADE class of 2019、CompTIA Certified Technical Trainer、Adobe CE Level 1&2。
教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて導入事例やノウハウを発信している。2013年3月にiPad×教育をテーマにした国内初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」を出版。2020年10月より、YouTubeチャンネル「TDXラジオ(https://www.youtube.com/c/TDXRadio)」を開設し、「Teacher’s [Shift]〜新しい学びと先生の働き方改革〜」のメインパーソナリティを務める。NPO法人 iTeachers Academy 理事・事務局長。
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