2018年8月10日
DO-IT Japan、学生がマイクロソフトで最先端のテクノロジーに触れる
DO-IT Japanは7日、「DO-IT JAPAN 2018 夏期プログラム」を日本マイクロソフトの品川本社で開催した。
DO-IT Japanは、障がいや病気のある小中高校生・大学生の高等教育への進学とその後の就労への移行支援を通じ、未来のリーダーを育てることをミッションに2007年から活動を開始。東京大学先端科学技術研究センターが、日本マイクロソフトなど複数の共催企業や官公庁とともに運営している。
DO-IT Japanの活動は、「Scholar Program(スカラープログラム)」、「PAL Program(情報提供)」「School Program(環境整備)」の3つのプログラムで構成。メインである「Scholar Program」は、全国から選抜された障がいや病気のある学生に直接プログラムを提供するもので、参加している学生は「スカラー」と呼ばれ、テクノロジーの活用を中心的なテーマに、さまざまなプログラムに参加することができる。
この日開催された「DO-IT Japan 2018 夏期プログラム」は、5日間にわたる日程の3日目。中高生と大学生のスカラーたちが日本マイクロソフト本社を訪問した。
午前のマイクロソフトスペシャル講義では、同社最高技術責任者の榊原 彰氏が登壇。「みなさん、マイクロソフトはWindows、Officeの会社というイメージでしょうか? 私たちは時代やニーズに合わせて変化していて、今の主力はクラウドです」と初代CEOのビルゲイツから現在までの同社のビジネススタイルを大型スクリーンに表示して解説した。
スカラーたちは、講義前にダウンロードしておいた同じPDFの資料を各自のノートPCやタブレットに表示しながら、デジタルノートブックのOneNoteを活用してメモを取るなどしていた。OneNoteはマイクロソフトが提供しているソフト。画像や音声の記録、スケッチなどもでき、自分が学んだことを整理しやすい。
字を書くことが苦手だったり、視野が狭かったり、手足が不自由だったりと、スカラーが抱える困難はさまざま。画面に表示される文章や画像を見やすいように拡大して閲覧したり、音声読み上げソフトのNVDA(Non Visual Desktop Access)を使ってテキストを音声化しイヤホンで聞いたり、それぞれが必要に応じて学びのスタイルを工夫し、ICTを活用しながら聴講していた。
榊原氏は、第1~3次産業革命までの時代の流れを説明したうえで、「ではこれからやってくる第4次産業革命とは? AI、つまり人口知能を使って人の知性を補うといった新しい革命が起こるだろうと言われています。マイクロソフトもAIに注力していて、誰にでも使いやすくリーズナブルに提供できることを目指しています」。「その中でも力を入れて開発しているのが『会話をするAI』」と、「女子高生AIりんな」を紹介した。
「女子高生AI りんな」は、2015年8月にマイクロソフトからTwitterとLINEでデビューしたAI。現在、700万人のフォロワーを有する、女子高生の言葉で話してくれるAIだ。なぜ開発したのか? その理由を「仕事の生産性を高めるだけではなく、もっと人の感情に訴えるような、寄り添うような、そんな会話のテクノロジーはどうあるべきかを研究している中で『りんな』は生まれた」と明かした。
開発を担当している、マイクロソフトディべロップメント サーチテクノロジー開発統括部 りんな プログラムマネージャーの坪井一菜氏は、「人間は、たとえばお母さんの言葉を真似して赤ちゃんもその言葉を発する、つまり周りの人の会話を真似してしゃべるようになります。『りんな』も同じで、インターネット上にある多くの会話データから、どうしゃべるかを勉強しています。それが機械学習(ディープラーニング)と呼ばれるものです」と「りんな」の仕組みを解説。
「ただ、勉強していくうちにヘンな言葉を覚えておかしな返事になってしまうことも。それは違うと教えてあげる先生のような存在がAIには必要で、一緒に学んでいくことが大事。それがAIの開発者の仕事です。これからの皆さんのポジションはこういうところではないかと思います」と加えた。
最近の「りんな」が頑張っているのは「歌」だという。デモの歌が流れるとスカラーたちは驚きの表情に。「りんな」の歌声はまるで本物の人間が歌っているかのよう。背景には、音声技術をはじめとする最先端のテクノロジーの存在がある。
午後には、「パソコンを自分の味方にする」をテーマに3つのテクノロジーセミナーが行われた。スカラーたちはグループにわかれ、それぞれセミナーに参加。その後、同社オフィスを見学し、最後に代表取締役社長の平野拓也氏と交流した。
学習を支えるテクノロジーは、学ぶ機会の提供はもとより、その体験を通して、知ることの楽しさ、他者とのコミュニケーション、自分と社会とのつながりなど、学びの周辺やその先にあるものに対して視野を広げたり、学んだことから新しい着想を得たりするのに有効なツールでもある。ICTを活用することで、生活の困難を自分ならではの強みに変換できる可能性もあるだろう。学生たちが何かにチャレンジする勇気を育むのもまたICTの持つ魅力と言えそうだ。
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