2019年1月7日
倉敷市立精思高校、ドローン体験講座で小学生の歓声響く
岡山県倉敷市立精思高等学校は昨年12月26日と27日の2日間、倉敷市立中州小学校の児童を対象にドローンの体験講座を同校の視聴覚教室で開催した。
講座では精思高校の教員2名と、同校の生徒2名が講師を務めた。参加した13名の児童は2~3人のグループに分かれ、1グループ1台のタブレットとドローンを使用して操縦やプログラミングを体験した。
取材した26日は、タブレットの操縦画面からドローンを手動でコントロールする体験がメインだった。はじめに、同校福井順也教諭と池田遼教諭からドローンの扱いについての簡単な説明と注意があった後、子どもたちにタブレットが渡された。
この日用意されたのは、岡山総合教育センター情報教育部から借り受けたRyze Tech社のドローン“Tello”とiPad。児童は自分たちでwi-fiを経由してドローンとiPadを接続する作業からスタートした。ドローンに搭載されたカメラに写る画像がiPadに送信されていることを確認し、離陸準備に。羽音が響きドローンが離陸すると、教室には歓声が響いた。
ほとんどの児童が初めてのドローン体験とあり、スタート直後は直線飛行やホバリング(空中で停止すること)も難しく、壁や天井にぶつかる場面も見られた。しばらくは飛行するドローンを目で追うだけが精一杯だったが、徐々に視線は手元のiPadに。搭載されたカメラに映る映像を確認しながら飛行し、正面から自分たちを映す余裕も生まれた。前半の終わりには全員が“手のひらに着陸”を習得。二度目の歓声とともにドローンは元の位置に戻った。
20分間の休憩を挟み、後半は教室内に立てたポールの間のジグザグ飛行や、校内の廊下をドローンだけで探検させるといった難易度の高い動きに挑戦。
教室では4台のドローンを4本のポールの間で行き来させたが、衝突などの事故もほとんどなく、迷子になったドローンを他のグループの児童がナビゲートするなど、グループを超えたコミュニケーションも見られた。
一方廊下では、児童は掲示された地図とiPadに映る壁や障害物の映像を確認しながら、決められた位置に立ってドローンを単独飛行させた。教室内での活動と異なり、ドローン本体が見えない場所での操縦を体験。復路では操縦者とドローンの左右が逆になる“ドローン目線”も体感した。
児童たちが思い思いにドローンを楽しむ中、講師の高校生はバッテリーの交換や起動時のコントロール指導、デモンストレーションなどを担当。体験講座には企画から関わったという生徒たち。この日参加した同校商業科2年の林優弥さんは、「初めて教室に参加する子でも、操作についてのサポートはほとんど必要としない」と話す。一方で時間をかけているのは企画と操作の事前習得。「パソコンの前に座ったまま作業するより、ロボットやドローンなど体を動かしながら情報機器に触れるのが楽しい」という自身の経験を活かし、参加児童が五感を使って実践を楽しめる内容を工夫している。
同校では2018年夏にも小学生を対象とした体験講座を実施。参加児童はプログラミングロボットの”ozobot”と“ロボホン”を使ってプログラミングを体験した。折しも、倉敷には西日本豪雨で被災した人が多く、同教室では「被災地の人を励ます動き」をテーマにロボットをプログラミング。児童がロボットを使って撮影した動画メッセージは実際に被災地に届き、離れた場所にいる人とのつながりも生んだという。
教育センター、高等学校、小学校が一体となった取り組みについて池田教諭は、「プログラミング教育は認知されてきてはいるものの、児童や生徒だけでなく、教員も含めてロボットやドローンなどの情報機器に触れる機会はまだまだ少ない」と話す。
パソコンのデータをホワイトボードに直接反映させる機器や、iPadが完備されているという比較的設備の充実した同校でも「それらが十分に使いこなせているとは言えない」と同教諭。「小学生を対象とした講座を開催することで、参加する児童だけでなく、準備や指導に関わる教員や生徒の情報機器に触れる機会も増やしたい」と語った。
また機器の操作習得だけでなく、体験講座の企画運営や児童に教えるという経験を通し、講師として参加する高校生が社会で通用する能力を身につけていくことも目的の一つに挙げている。
講座の終盤には、児童たちは操作するドローンでの自撮りや、見学や送迎に訪れた保護者の手のひらへの着陸など、この日の成果を披露。保護者も積極的に操縦を体験し、家庭での購入を検討する声も聞かれた。
27日は同じドローンを使用し、動きを事前にプログラミングして操縦する講座が開催された。
ICT教育に造詣の深い同校土肥直樹校長が発端となり、行政・高校・小学校が交流しながら楽しく学ぶことのできる講座も、被災地との関りなどを通じて認知が広がった。地域ぐるみで情報機器に触れ、コミュニケーションを深める機会を増やせるモデルケースとして今後の取り組みが期待される。(取材:黒田 靜)
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