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2020年12月15日

大学のリメディアル教育の教材に「すらら」を活用/九州保健福祉大学

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九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)は、薬学科(取材当時)の全1年生に対し、リメディアル教育の教材として「すらら」を活用している。大学生の学習にすららは有効か。担当者に話を聞いた。

すらら導入理由は、「レクチャーの質の高さ」と「ウィークポイントの分析」

九州保健福祉大学は、医療・保健・福祉の専門家や、プロフェッショナルな人材を育成している。「学生一人ひとりのもつ能力を最大限に引き出し引き伸ばし、社会に有為な人材を養成する」を建学の精神に、社会福祉学部や保健科学部、薬学部、生命医学部の4学部9学科を有する。基礎知識の習得から実習の技術指導まで、きめ細やかな指導を実践しているのが特徴で、卒業生の多くが国家試験を取得して医療・福祉・保健の分野で活躍。なかでも平成30年度の薬剤師国家試験新卒合格率は97.1%であり、全国の私立56大学中、第3位の実績を誇る。

九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)

九州保健福祉大学は、2015年度から薬学科の1年生全員に対し、リメディアル教育の教材として「すらら」を導入した。薬剤師は近年、患者の身体に触れながら薬の効果や副作用の早期発見を行う「フィジカルアセスメント」が求められるなど、多様なコミュニケーション能力が必要とされており、国語力の向上が課題になっていたというのだ。

同大学の副学長 山本隆一氏は「医寮分野では専門書を読んだり、実習に行ってレポートを書いたり、さらには、社会に出れば患者とのコミュニケーションが求められたりと語学力が欠かせません。そのため、学生には基礎となる国語力を鍛えてほしいのですが、あいにく本学には国語教育の専門家はいませんでした。そこで、すららを導入し国語力の強化に取り組み始めたのです」と語る。

また同大学大学院医療薬学研究科 薬学部薬学科 環境保健薬学研究室の白崎哲哉教授よれば、薬学科では社会人経験のある学生が多いことも、すらら導入の背景にあるという。同教授は、「社会人から大学に戻った場合、数学などで忘れている部分があります。しかし、こうした学生は入学後に伸びるので、何らかの手立てをしたいと思い、すららが活用できると思いました」と話す。

左)九州保健福祉大学 副学長 山本隆一氏 右)同大学大学院医療薬学研究科 薬学部薬学科 環境保健薬学研究室 白崎哲哉教授

すららをリメディアル教育の教材として選んだ理由はなにか。これについて白崎教授はレクチャーの質が高いことや、すららの学習システムの良さを挙げた。「すららは、レクチャー自体がしっかり構成されており、分からない部分を何度も聞くことができるのが良いと思いました。また、ウィークポイントを自動的に分析し、個人の習熟度に合わせたレクチャーやドリルを提示してくれるのもいいですね。大学では一人ひとりの能力に合わせた指導をすることは難しいですから」(白崎教授)。また山本副学長は、すららが2012年に「第9回eラーニングアワード」で文部科学大臣賞を受賞したことが選定の決め手になったと述べた。早くから取り組み、蓄積されたノウハウがあると判断したというのだ。

2週間ごとの小テストで学んだ内容を確認。到達点を決めて真剣度を高める

九州保健福祉大学の薬学科は、すららを利用して、現代文と評論文、数学のリメディアル教育を実施している。大学の講義中にすららを使うことはないが、同学科では全ての学生に対してコンピュータを必携にしており、学生たちは空き時間や自宅で与えられた課題に取り組む。

すららの進め方としては、学生に対して2週間毎に課題が配信され、学習記録のチェックも2週間毎に行われる仕組みだ。与えられる課題の内容は、最初のテスト結果でレベル分けされたクラスごとに設定される。下位のクラスに対しては毎日1時間程度、上位のクラスについては1日20分程度の学習量を設定しているという。

一方で、すららの課題を与えたものの、学生の学習記録をチェックするだけでは、実力の定着が確認できない。そこで、同薬学科では昨年度から、すららの「テスト機能」を利用した小テストも導入した。テスト機能では、それぞれの学習範囲に合わせて、10~20分ほどのテストを自動作成できるのがメリット。どれくらい内容が理解できて、どこが分かっていないのか。テストが終わると、結果と解説、つまずき診断などが表示され、実力の定着度が可視化されるのも特徴だ。同薬学科では、2週間の課題を提出した後の最初の講義で小テストが実施されるという。

白崎教授は、数学の課題については、すららの小テストで毎回75点、平均で80点をクリアしなければ、期末テストが受けられないという厳しい基準を設けている。これについて同教授は、「一見、厳しいハードルのように見えますが、すららの小テストはそれぞれの習熟度に合わせた問題が出題されるので、この点数はきちんと学習していればクリアできると考えています」と語る。小テストがあることで、学生たちの真剣度も変わった。学生本人が成績を把握できるようになり、取り組み方も変わったというのだ。

センター試験レベルの国語力が伸び、成績上位層の学生が増えた

すららを導入してから、学生の学力はどのくらい伸びたのだろうか。また学習においては、どのような効果が得られたのだろうか。

まず数学については、学生らの学力の中身が見えるなど導入当初から手応えが得られたという。白崎教授は「高校の数学で80点取れる学生が、実は中学の数学で出来ていない部分があったり、その逆の学生がいたりと、数学をきちんと積み上げて学んでいないことが分かりました」と語る。そのため、すららではウィークポイントを強化する学習を行い、学生の成績向上につなげた。大学2年次に学ぶ放射化学では、計算問題を解けない学生が多くいたが、今ではきちんとした計算ができるようになったという。

一方で、同教授は「国語については、なかなか明確な成績が表れませんでした」と話す。しかし、さまざまな試行錯誤を重ねた結果、過去2年間で成績も向上。同じ年の第1回目と第3回目のテスト結果を比較しても、成績下位層の点数が上がり、全体のボトムアップにつながった。また第1回目のテストでは80点以上を取る学生が4名しかいなかったが、第3回目には35名の学生が80点以上の点数を取るなど、上位層の学生も増えた。

国語の成績アップの要因として白崎教授は、センター試験レベルの問題に対する正解率が上がったからではないかと分析している。特に顕著だったのは成績下位層で、何度も繰り返し中学レベルの問題を実施したところ、それだけでセンター試験レベルの読解問題が出来るようになってきたというのだ。同教授は「中学レベルといえど、おろそかにしてはいけないと思いました。ここをきちんと抑えることで、学生たちの国語力は確実にアップし、読み取る力が伸びると思いました」と語る。

実際に、学生の学ぶ姿にも変化が見られた。たとえば、ある学生は教科書の誤った記載を読み取り、その部分の論理が間違っているのではないかと同教授に伝えたという。「今まで、そうした指摘をする学生はいなかったので、国語力が伸びてきたひとつの証拠ではないかと思います」と白崎教授は語る。

今後の取り組みについては、すららの課題と小テストでさらに学力を伸ばすとともに、きちんとした文章を書く力も伸ばしていきたいと話す。

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