2021年11月1日
教育危機「2億人が遠隔学習の体制整わず」=ユニセフが報告書で警鐘=
ユニセフ(国連児童基金)は、「2億人の学齢期の子どもが暮らす低・中所得国31カ国では、将来の緊急事態における学校閉鎖に備えて、遠隔学習を導入する体制がいまだに整っていない」とする報告書を、10月28日付で発表した。
また、そのうち1億200万人は、新型コロナパンデミックの少なくとも半分以上の期間、学校が完全または一部閉鎖された14カ国に住んでおり、多くの子どもたちがいかなる形態の教育も受けられない状況にある、という。
ユニセフが発表した「遠隔学習準備指数」(Remote Learning Readiness Index)は、低・中所得国の生徒の約90%を対象に、対面授業の中断に対応して遠隔教育を提供するための各国の準備状況を示したもの。
「家庭の資産の利用可能性と親の教育レベル」、「政策の展開と教師のトレーニング」、「教育分野における緊急事態への備え」という3つの領域に焦点を当てて分析している。
それによるとベナン、ブルンジ、コートジボワール、コンゴ、エチオピア、マダガスカル、マラウイ、ニジェール、トーゴは、教育分野で最も改善の必要性が高い国といわれているが、コロナパンデミックの際には、特にコンゴやマダガスカルなど、過去19カ月間のうち少なくとも半分以上の期間、学校が完全または一部閉鎖されていた国々に住む生徒たちが、遠隔学習の準備ができていないことによって特に悪影響を受けた。
同報告書では、遠隔学習の限界とアクセスの不平等さについて概説し、実際の状況は入手可能なデータが示しているよりも、はるかに悪い可能性があると警鐘を鳴らしている。
また、高中所得国や高所得国を含む調査対象外の国でも、生徒たちが遠隔学習の課題に直面していることが、逸話や定性データによって明らかになっている。
【報告書の主な内容】
・調査対象となった67カ国のうち31カ国は、すべての教育レベルで、遠隔学習を提供する準備が整っていない。その中で最も影響を受けているのが、西部・中部アフリカ地域の子どもたちで、残りの17カ国は平均的な準備ができており、19カ国は平均以上の準備ができている
・就学前教育は最も軽視されている教育レベルで、新型コロナのロックダウンの際にも、対応するための政策を展開していない国が多く、最も重要な発達段階にいる幼い子どもたちが取り残されている
・31カ国のうち23カ国は、気候・環境ショックを受ける危険性が高いあるいは極めて高いとされており、1億9600万人の学齢期の子どもたちが緊急時の学校閉鎖のリスクに晒されている
・アルゼンチン、バルバドス、ジャマイカ、フィリピンは、最も準備が進んでいる。しかし、こうした指標のスコアが高い国々にでも、国内で格差があり、貧しい家庭や農村部に住む子どもたちは、学校閉鎖中に取り残される可能性が非常に高くなっている
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