2025年7月30日
8割を超える教員が「10時間以上の勤務」、4人に1人が「12時間を超えて勤務」=小学館調べ=
小学館は29日、同社が運営する教員向けWebメディア「みんなの教育技術」が、全国47都道府県の教員・教育委員会などの教育関係者5412人(うち5181人が現役教員)を対象に実施した、「教員の勤務実態のリアル」に関するアンケート調査の結果をまとめ発表した。

それによると、勤務時間(出勤してから退勤するまで)について聞いたところ、8割を超える教員が「10時間以上」の勤務で、4人に1人が「12時間を超えて」勤務していることが分かった。また、数値で勤務時間を調査したところ、平均値は11.17時間、中央値は11時間になり、法定の勤務時間を上回る勤務が常態化している可能性が伺える。
回答者からは、「寝る、入浴以外の時間はすべて仕事しているのに、授業準備などが間に合わないため毎日すべてがつらい。土日=休日という概念が存在しないくらい仕事が多い」(20代・男性)、「仕事量が多すぎてストレスと疲労がたまり、育児が思うようにできない。仕事に対する意欲も湧いてこず、子育て中だとさらにつらさを感じる」(30代・女性)などの声が寄せられた。

1日に取得できている休憩時間について尋ねたところ、全体の65.6%(3522人)が「ほとんど取れない」と回答。これに「15分未満」を加えると、この質問に答えた教員の85%近くが「まともな休憩を取れていない」実態が浮き彫りになった。労働基準法が定める休憩時間(45分以上)を確保できているのは、全体の1.5%だけだった。
教員からは、子どもがいる時間は子どもから目が離せないので休憩ができない上に、隙間時間も様々な理由から休憩どころではないという実態、教員がコントロールできる時間の少なさ、休憩なしが常態化している、などといった理由が挙げられた。
また、休憩がとれないことで、「トイレに行けない」という声がかなり多く見られ、膀胱炎を繰り返しているという教員もいた。精神的にも身体的にも教員の健康に影響を及ぼす深刻な事態だ。

出勤前や退勤後、「持ち帰り残業」をする日が週平均何日あるか、を聞いたところ、半数以上が「週3日以上」の持ち帰り残業を行っていることが分かった。教員からは、学校では集中できないので持ち帰って行わざるを得ない、家庭の事情で早く帰らなくてはならないが、仕事が終わらないのでやらざるを得ない、という声が多く寄せられた。一部の回答からは、「働き方改革」の取り組みが現場の実態に即していないとの懸念も伺えた。

また、教員の約9割が休日にも業務を行っていることも分った。持ち帰り残業も休日勤務も「ほとんどない」と答えたのは401人にとどまり、回答者の少なくとも9割以上が1カ月のうちに持ち帰り残業か休日勤務、あるいはその両方をしていると考えられる。

回答者の8割以上が選択した最大の要因は、「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」というもので、さらに、有効回答数5233人のうち、89.4%が「複数の要因」を選択しており、解決の難しさが伺える。
「勤務時間の長さ以外で、『つらい』と感じるのはどんな時か?」と質問したところ、最も多かったのは「保護者から理不尽なクレームを受けている時」で、約4割を占めた。このほか「目的のはっきりしない会議に参加している時」や「教材研究の時間が取れず十分な授業準備ができない時」など、教育の本筋に集中できない状況も多くの教員にとってストレスの要因になっているようだ。
一方、「『これがあるから教員はやめられない!』と、思うような強い喜びを感じるのはどんな時か?」と聞いたところ、「子どもの成長」という言葉が溢れていた。授業の手ごたえや楽しさといった声と合わせると、回答者の約7割にのぼる。子どもの成長、面白い授業という、教員本来の仕事が教員の望みであることが伝わってくる。

現在、外部人材による学校支援が様々な自治体で行われているが、その満足度について選択式で尋ねたところ、導入されている回答者の中で、「とても満足」「ある程度満足」を合わせても約38%にとどまり、不満の理由として最も多かったのは「人手が足りない」という指摘で、次いで多かったのは、「質のばらつき」だった。
最後に、「もし、自分の裁量でサポーターを配置できるとしたら、どんな人にどんなことをお願いしたいか?」と尋ねたところ、支援が必要な児童への個別対応、授業の補助など、「授業に集中できる環境を整える」ことを目的とした配置に関する要望が、約半数を占めた。また、学級に1人、学年に1人などの配置を求める意見も多く見られた。
丸つけ、会計など、子どもと接する以外の仕事について補助してほしいという要望も多く見られたほか、業務削減のコンサルティングや、保護者対応専門スタッフなどを求める声もあった。
この調査は、全国47都道府県の教育関係者を対象に、5月20日~6月30日にかけて、Webメディア「みんなの教育技術」でアンケートをとる形で実施した。有効回答数は5412人(男性1605人、女性3472人、その他・無回答335人)。回答者の年代は、「20代」995人、「30代」1358人、「40代」1631人、「50代」1127人、「60代以上」219人、「無回答」82人。
また、回答者の校種は、「小学校」4628人、「中学校」373人、「特別支援学校」141人、「高校」73人、「義務教育学校」62人、「教育委員会」19人、「中等教育学校」8人、「その他」30人、「無回答」78人。
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