2013年10月4日
東京大学/電子+紙=ハイブリッド図書館の実証実験を開始
東京大学附属図書館は3日、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、京セラ丸善システムインテグレーションと、研究・教育分野における電子学術書活用を目指して、ハイブリッド図書館の実証実験を開始すると発表した。
東京大学では、「新図書館計画」として新館の建設などを進める一方、電子書籍と紙書籍を統合的に相互活用できるハイブリッド図書館の実現を目指しており、附属図書館主催で11日から始まる全学自由ゼミ「未来の書物の未来」の授業で電子学術書の利用実験を開始する。
実験では、教師・学生間で電子学術書への書き込み・読書体験を共有する機能や外部の知識ネットワークと連携など、授業や学術研究を支援する仕組みを新たに開発したKCCSグループが提供する電子図書館サービス「BookLooper」を利用する。
実際に使用されるのは、東大で教鞭をとった南原繁の著書や丸山眞男の講義録など10冊余りで、東京大学出版会から提供される。学生や教師は、他の電子図書約1000冊も含めてPCやタブレット端末で活用する。
東大とKCCSグループでは、人文社会系分野における利用モデルを確立するとともに、東京大学の集合知を使った書評・レコメンドシステムを有効に連携させた「書評システム」など、研究・教育分野のさらなる電子学術書活用を目指すとしている。
現状で不足している電子学術書の増強策について、附属図書館副館長の石田英敬教授は、「東大教師の書いた本のデジタル化をめざしており、人数や著作数を洗い出している。現段階では、文学部系教師の著作が数十万冊程度あることまで確認できている。こうした著作物の著作権などをクリアしてデジタル化を進めたい。また、今回のような実験が、出版社の学術書のデジタル化や電子書籍としての復刊の動きにつながることを期待したい」と語った。
今回の実証実験では、自動書庫の採用によって失われる「書架を散策して本と出会う機会」を取り戻すため、ユニークアイディとの共同研究で電子と紙の書籍が融合した「ハイブリッド書架」の開発にも取り組むという。
東京大学の進める「新図書館計画」では、教育と研究の新たな拠点として本郷キャンパスの総合図書館前広場の地下に300万冊を収容する自動化書庫と能動的な学習スペースのある新館を建設し、歴史ある本館は外観を保存しながら内部を全面改修する計画。2019年に完成の予定。
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