2022年3月11日
Chromebook で地域貢献目指し、「CHUO計画」稼働スタート / 豊橋中央高等学校
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「地域のICT化」を進める学校を目指す
学校が教育のICT化を進める際、その目的の多くは授業改善か校務軽減のどちらか、もしくはその両方だ。先進的な授業や、校務のスリム化に関する成功事例も多数聞かれるようになってきている。そんな中、少し違う視点からICT導入を意義付けているのが豊橋中央高等学校(愛知県)だ。高倉嘉男校長は「地元(豊橋市)に貢献したいのです。『地域のICT化』を進める学校になりたいと思っています」と言う。
同校では、校名と「Cyber High Upgrade Operation」のイニシャルをかけて名付けた、「CHUO計画」を策定。校内のICT化を推進し、2022年度から本格稼働させる。目標は、同校を「日本一のICT先進校」にすることだ。
グローバル化やICT化の波を感じにくい地域性
高倉校長はユニークな経歴の持ち主で、大学卒業後はインドに渡りヒンディー語を研究。同校に入職したのは帰国後の2013年だ。しかし、そのインドで受けた衝撃が、「CHUO計画」の実行につながっていると明かす。
インドは、世界的なIT大国としても知られる。独自の理数教育に強みを持ち、エンジニアは花形職業。国を挙げて人材育成に取り組んでいる成果か、NASAの技術者の約4割がインド人、Google や Microsoft のCEOもインド人だ。「おまけに彼らはハングリー精神が強く、弁も立ちます。日本の子どもたちは、経済のグローバリゼーションの中で、そんなハイスペック人材と協働したり、あるいは競い合ったりしないといけないのです」(高倉校長)。
一方で「我が町、豊橋のような地方都市にいると、どうしてもそうしたグローバル化やICT化の波を感じにくい面があります。職場に外国人がいるケースも少ないですし、自宅にインターネット環境のない家庭もあります。誰が悪いというものではありませんが、大人も子どもも保守的な価値観になりがちな環境は気になっています」と語る。地域を愛するがゆえの問題意識だ。
生徒のICTスキルやリテラシーを底上げし、社会に送り出したい
そうした土地柄において、同校の生徒たちはその約1/3が卒業後に就職をする。地元企業で働く卒業生も多い。学校には、地域への人材輩出機関としての役割もあるが、同校は特にその色合いが濃い。しかし、地域特有の課題もある中で、生徒たちを小さくまとまった“井の中の蛙”にしたくないというのが高倉校長の願いだ。
「別に生徒全員にエンジニアを目指せと言うのでも、インド人に勝てと言いたいのでもありません。せめて、今後の社会を見据えた実践性を身に付けてから送り出してあげたいのです」と語る。
前述のように、同校におけるICT化のねらいは、それを活用した最先端の授業や校務がメインではない。もちろんそうした取り組みも行うが、本質は、学校生活の中にICTが普通に存在する日常を作ることだ。オフィスアプリ、デザインソフト、動画編集、ネットワーク、あるいはデバイスや周辺機器の扱いなど、これらを自然と使える環境を作ることで、生徒のICTスキルやリテラシーの底上げを目指したのである。
そして、そうした若者たちに地域で活躍して欲しい。地元企業のICT化をさらに加速させる、ロールモデルとなって欲しい。それが学校としての地域貢献だと考えている。すなわち、この発想こそ「CHUO計画」の核心なのである。
「CHUO計画」の中核をなす Chromebook 導入
その「CHUO計画」において、中核に位置付けられているのが Chromebook(ASUS社)の導入だ。2021年12月、1・2年生全員に配布。「CHUO計画」の本格稼働元年となる2022年度から、全生徒が所有する体制が完成する。
Chromebook は、Google の独自OS(Chrome OS)を搭載したノート型デバイス。他にも端末の選択肢がある中で Chromebook を選んだのには、いくつか理由がある。
まず、端末を一元管理する Chromebook 用のMDM(Chrome Education Upgrade)の機能が使いやすく、授業や管理で必要となる設定や制御を1台ずつ行う必要がない点。次にGoogle ドキュメント、Google スプレッドシート、Google スライドなど、Google のアプリケーションセット(Google Workspace for Education)一式を利用できること。そして、中でも高倉校長を「感動した」と言わしめたのが、それらのアプリがクラウド上で稼働する点。これにより、例えば100人の生徒が同時に同じファイルを編集することも可能になっている。
タブレットやスマホなど、感覚的に操作できる端末の良さも十分承知の上だが、その側面として、タイピングができない子どもたちも増えている。「生徒のICTスキルを伸ばす」という目的に立ち返ったとき、キーボードが付帯していることは重要な条件だったと言う。同校が採用した端末はASUS Chromebook Detachable CM3。キーボードは脱着可能で内蔵型のUSIスタイラスペンも付属しており、多彩な使い方が想定できる。何より、これだけのスペックを持ちながら安価であったことも魅力だった。
先行導入で、早くも活用する教員・生徒の姿が
まだ12月に先行導入して間もない段階であり、体系的な活用はこれからだが、さっそく実践事例も生まれている。コロナ対応で自宅から授業を行う教員もいれば、スライド発表や調べものに Chromebook を使う生徒の姿も見られるようになった。
「CHUO計画」と Chromebook の導入において高倉校長が最も懸念していたのは、これらの活用が生徒にしっかり定着するのかどうかだった。しかし、それは杞憂に終わったようだ。目指した「ICTが普通に存在する学校の日常」は、順調に滑り出しつつある。
今後は「協働学習への応用やタイピングコンテスト、英単語の暗記、作文・小論文のプレゼンやシェア、部活動の練習などにも積極的に応用していきたい」と語る高倉校長。掲げた「日本一のICT先進校」は、単なるスローガンではない。本気でその高みを目指し、地域に資する学校としての歩みを踏み出したところだ。
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