2016年9月5日
「先生から始めよう」小金井市教委がプログラミング教育研修会
今年4月、2020年から小学校でのプログラミング教育の必修化が決まったことを受け文部科学省では、「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」を設置、小学校でのプログラミング教育の実施に関して議論、6月には「議論のとりまとめ」を発表した。
それによると、小学校でプログラミング教育に取り組む目的について、コーディングを学ぶことではないと強調。小学校での実施は、児童にプログラミングへの興味を持ってもらうことが重要であり、目的は「プログラミング的思考」などの育成にあるとした。
そして、プログラミング教育を全国一律で実施することについては、ICT機器の整備や指導員の配置など学校ごとに条件が異なることから、懸念もある。その点については、各学校がそれぞれの実情を踏まえた上で、プログラミング教育を行う学年や単元、教科などを計画・実施していくことが必要だとしている。
つまり、小学校でのプログラミング教育は新しく教科を設けるのではなく、既存の教科の中で実施してくださいね。ということ。さて、何をどうやればいいのか。どこから手を付けたらいいのか。そもそもプログラミング教育って、何を教えたらいいのか。日本中の小学校教師の多くは、戸惑いを隠せないことだろう。
夏休みも終盤を迎えた8月30日。東京都小金井市教育委員会は、「小金井市立小・中学校プログラミング教育研修会」を同市の前原小学校で開催した。
全体会の冒頭、「小学校段階のプログラミング教育~有識者会議の議論のとりまとめを読み解く~」と題して講演した、みんなのコードの利根川裕太代表は、会場に集まった100数十名の小中学校教師に「みなさんの中で、プログラミング教育の実施にあたって、不安を感じている方はいらっしゃいますか」と挙手を求めた。8割、いや9割、ほとんどの教師の手が挙がった。
利根川代表は、有識者会議の「議論のとりまとめ」の解説から話をすすめた。第4次産業革命の時代といわれ、社会が変わっていく。社会が変われば、学校も変わらなければならない。そんな時代のどんな仕事、職業でも求められるのが論理的に考えること。プログラミング的思考を育むことは、そんな未来につながっていくことだという考え。小学校では、プログラミング的な手順に気づくということ。
文部科学省の情報教育には、「情報スキル」と「情報リテラシー」という分野があるが、「プログラミング」これらとは異なった取り組みになっていく。プログラミングというと英文が並んだものを思い浮かべるかもしれないが、みんなのコードが取り組む「Hour of Code(アワーオブコード)」などもビジュアル的で馴染みやすいので、気軽に取り組んで欲しい。と、教師たちにプログラミングとの接触機会を促した。
つづいて登壇した、前原小学校の松田 孝校長は「ビジュアルプログラミング言語について」と題して講演。松田校長は、「教材となるプログラミング言語には、ビジュアルで学べるものからロボットを使ったもの、本格的なテキストによるものまであるが、今回のワークショップでは小学校で使えるものをそろえた。しかも、指導してくれるのは“Viscuit(ビスケット)”開発者の原田さんをはじめ、日本における“Scratch(スクラッチ)”普及のリーダーである阿部先生やみんなのコードの利根川代表など第一人者ばかり。プログラミングが教えるものではなく、学び合いだということを体感して欲しい」と参加者を後押しした。
その後、十数名ずつに分かれてワークショップが行われた。ワークショップは「Viscuit」「PETS」「Scratch」「Hour of Code」「教育版レゴ マインドストーム EV3」「アーテック」「CodeMonkey(コードモンキー)」「GLICODE(グリコード)」「Scratch& Minecraft(ラズベリーパイを使って)」の9種類。
ワークショップのスタート段階では、緊張感を漂わせていた参加者たちもプログラミングで形になったり動いたりすると「おお~っ」「わーっ」といった歓声も聞こえ、教え合うシーンもみられるようになった。
しかし、子どもたちがプログラミングに取り組んでいるときのような、はじける笑顔や積極的な交流、学び合いはなかなか見られず、デジタルネイティブと教師世代のギャップを感じさせた。小学校におけるプログラミング教育を実践するのは教師であり、今後研修の場だけでなく、個人的な取り組みとしてでもプログラミングに触れる機会を創出していく必要があるだろう。
松田校長が教師向けのプログラミング講習会や勉強会の最後に必ず言う台詞がある。「みなさん、学校のパソコン教室に行ったら、“Viscuit”も “Scratch”も“Hour of Code”も、無料でやることが出来るんですよ。ちょっとやってみませんか」。
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