2018年12月3日
埼玉県、公立高校全校にGoogle for Educationで「学びの改革」
Googleと埼玉県は11月28日、Googleが提供する教育機関向けソリューションGoogle for Educationを活用した公立高等学校での学びの事例紹介を行った。
冒頭、Google for Education マーケティング統括部長 アジア太平洋地域 スチュアート ミラー氏は、「Google for Educationのミッションは『刺激的な学習体験を提供』することです。共有可能な端末の『Chromebook』、共同作業のためのツール『G Suite for Education』、教員と生徒とのやり取りを効率よくするためのツール『Google Classroom』と大きく3つのソリューションからなります」と概要を紹介。
自身も以前は、静岡で教師を務めていたという。
「Chromebookは日本では2014年に登場。使いやすさ、管理のしやすさ、セキュリティ面にも優れ、教育機関に適したデバイスと評価を得ています。G Suite for Educationは、リアルタイムで共同利用できるツール。Googleドキュメントやスプレッドシートのほか、たとえば、試験やアンケートなどを自動採点・処理できるGoogleフォームなどもあり、Gmailやハングアウトといった充実した各種アプリケーションの数々を教育機関に無料で提供しています。Google ClassroomはG Suite for Educationの1つで、クラスの管理・整理のためのポータルアプリケーション。教師は課題を出したり、生徒は質問したり宿題を出したり、教師と生徒とのコミュニケーションがスムーズにできます。教師は授業の管理がしやすく、作業時間の短縮にもつながるため、働き方改革にも活用できるツールと言えます」と加えた。
埼玉県が、生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した「学びの改革」に取り組み始めたのは2010年のこと。その一環として、協調学習におけるICT活用を積極的に推進している。
その経緯について、埼玉県 教育局 県立学校部 高校教育指導課 学びの改革担当 指導主事 髙井 潤氏は、「私も以前は教師でした。教育に携わる人は“チョークとトークとワークシート”にこだわり、新しいものを取り入れるのがなかなか難しい(笑)。しかしこれからの学びに対応するにはそこからの脱却。学びを変えていく必要性から、埼玉県は東京大学CoREFと連携して「知識構成型ジグソー法」(※1)(以下、協調学習)の学びの型を取り入れました。2018年度は埼玉県内の県立高等学校139校中133校、約650名の教員が学校の枠を超えて授業改善に取り組むまでに拡大、今年9年目を迎えています」と説明した。
(※1)東京大学CoREFの三宅なほみ教授が考案した授業手法
そして協調学習に取り組む中で、「教材作成が大変」、また動きのある授業のため「話し合いの時間の確保が難しい」といった声が上がり、これらの課題解決には「ICT活用」が最善だろうと考えたという。
埼玉県では、教員が使うインターネット環境の更新にともない、メールをどうするか議論になった際、2013年1月にG Suite for Education(当時はGoogle Apps for Education)を導入。県立高等学校、特別支援学校の教員に校務として1人1アカウントを付与、また、総合教育センターの研修者用として公立学校の教員を対象にアカウントを付与した。
その後、先の協調学習の課題解決をするため、県教育委員会は2016年に「近未来学校教育創造プロジェクト」を立ち上げChromebookを導入。モデル校10校を選定して各校に43台の端末を配布し、ICTを活用した協調学習の実践、教材の蓄積・共有化、教員のICTスキルアップなどに取り組み、さらなる「学びの改革」推進を図ったという。
ICT環境整備の観点から、同 学びの改革担当 主事 平尾 勇樹氏は、「タブレット端末の検証は2016年度からの2年間。検証の成果を出した上で全校へ導入するステップを踏みました。そもそもタブレット端末は何が良いか? 端末になかなか予算を割けない事情もありました。埼玉県では先のとおり教員のアカウントがG Suite for Educationに入っていたことから、それらを活用でき、クラウドベースで管理もしやすく、手頃な価格であることからもChromebookを選定しました」。
アクセスポイントやプロジェクターなども文部科学省の指針に沿って整備が必要。平尾氏は、「いろいろな企業と一緒に進めました。私たちとしては埼玉県の学校というフィールドをお貸しするので、企業各社には機材の活用法など検討しませんかと意見交換を開くなどする中で、Googleの支援もいただきながらこの2年間検証を重ねました」と経緯を振り返る。
検証を終え、導入のフェーズに入った今。平尾氏は、「公立高等学校139校にChromebook、アクセスポイント、プロジェクターをステップごとに今後3年間で全校に入れる計画をしています。今年度は35校の予算が認められたので、各校にChromebookを44台、アクセスポイントは普通教室で使うことを想定し、イメージとして2教室に1つ程度を設置して全教室を網羅できる形に。プロジェクターも各教室に設置を計画しています」と、新学習指導要領がはじまるまでに139校全てにこれらの機器を設置していく展望を明かした。
この日、同席した埼玉県立川越南高等学校でも協調学習にG Suite for Educationを活用した授業実践などを重ねてきた。今年度には公開授業を6つ実施。生徒の学習意欲も高まっているという。同校教諭の春日井 優氏は、「本校は今年度35校の中に入っています。2年の検証期間中は尻込みぎみだった先生方も、ICT環境が整備されることでよりICTを活用しようという機運が高まってくるでしょう」と期待感を語った。
埼玉県は「協調学習」というコンテンツがあったからこそ、ICTがうまく活用できたのだろうと推測している、と髙井氏。「埼玉オリジナルをジャパンスタンダードへ、そしてグローバルスタンダードへ」がキャッチフレーズだという。
Google for Educationのように新しい学びを多面的にサポートしてくれるテクノロジーは様々に用意されている。今回、埼玉県が示した「学びの改革」の取り組みや推進力が、他地域にも好例として広がることが期待される。
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