2019年8月26日
教師全員で生徒の学び直しを支え、学習習慣の定着につなげる/札幌山の手高校
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札幌山の手高等学校(札幌市西区)は、学び直しのデジタル教材として2017年度から「すらら」を導入した。生徒たちの学び直しを全面的にサポートするために、全教員がすららの運用に関わる体制を築き、学習習慣の定着につなげている。その結果、英検の合格率が向上。生徒たちの学習意欲も高まっている。
好みが影響しないアニメーション教材 は、垣根を下げて始められる
札幌山の手高等学校は、一人ひとりの個性と能力を伸ばす教育に重きを置く私立共学校だ。部活動に熱心な生徒が多く集まり、全国レベルの選手も多い。一方で、難関大学合格をめざす生徒もいるなど、学業とスポーツの両方に力を入れる。同校では「特別進学」「進学」「体育」「総合」と4つのコースを設けて、それぞれの自己実現に向けたサポート体制を築いている。
西岡 憲廣校長は同校が抱える課題について、「本校には、部活動をがんばりたい、特進コースの少人数教育を受けたいなど、さまざまな要望を持つ生徒が入学してきます。そうした中で、生徒間の学力差が課題となり、学び直しを通じて基礎学力の向上を図りたいと考えていました。苦手なことで劣等感を感じてほしくないと思っています」と語る。
学び直しを実施するために、何をすればいいか。同校の中鉢雄己彦教諭は、今の時代であれば、PCやタブレットを活かすのが良いと考えていたという。「これまでも紙のプリントをベースにした学び直しに取り組んできたのですが、さまざまな習熟度の生徒に対して個別対応するには、あまりにも教師の負担が大きいのです。これを解決するためにはデジタル教材を使うのが、教師の負担も少なくて良いだろうと考えていました」と中鉢教諭は語る。
そこで中鉢教諭は、「オンライン動画を視聴する教材」「教師が自前で作った動画教材」「すらら」の3つを選択肢に挙げ検討した。同教諭は、「すららを選んだのは、アニメーションが決め手になりました。人間が出る動画教材は、“この先生がいい”、あの先生は嫌い“と好みが分かれますが、アニメーションにはそれがありません。大人から見れば幼く見えるかもしれませんが、高校生の感覚は意外にそうではなく、垣根を下げて始められると考えました」と選択理由を語る。そうした経緯を経て、札幌山の手高校では、2017年度からすららを本格導入した。
教師全員がすららの運用に関わるシステムで、学び直しを徹底する
札幌山の手高等学校では、家庭学習の一貫として、すららを宿題に活用している。年間の課題をシラバスにまとめ、2週間に一度、各教科担当から宿題を配信する。生徒たちは締め切りまでに提出しなければならないが、締め切り1週間前になるとホームルーム担任が進捗状況をチェックし、達成率が50%に満たない生徒に対しては、その時点で言葉がけやフォローを行う。さらに締め切り3日前になっても達成率が80%に満たない生徒に対しては、ホームルーム担任が同様に指導を行う。最終的に、締め切りを守れなかった生徒に対しては、居残り学習を行っているが、そちらは副担任が担当しているというのだ。つまり、すららの学習に関しては、徹底してやり切ることに力を入れている。
このような方法で、すららを活用している札幌山の手高等学校であるが、注目したいのは、全教員がすららの運用に関わっていることだ。宿題を出すのが教科担当、その進捗管理をホームルーム担任が行い、居残り学習を副担任が担当する、という具合に、全教員が何らかの役目を担っている。
中鉢教諭はこれについて、「すららを導入した当初、教師たちのコンピュータに対するハードルは高いと感じ、浸透させるのは難しいと思っていました。そのため、このような運用体制を考え、教師全員で取り組みを進めるようにしました。今では、教師たちも前向きに取り組んでいます」と話す。また、札幌山の手高等学校では、すららの導入に合わせて、授業改善にも取り組んだ。Team Teachingの手法を授業に取り入れ、学び直しのサポートができるよう環境を充実。授業と家庭学習、その両方を見直すことで、学び直しの質を高めた。
ちなみに、札幌山の手高等学校では、学校のパソコン教室にあるコンピュータと学校共有のタブレットを利用して、生徒たちがすららに取り組める環境を整備している。また家庭学習ですららを利用するときは、自前のスマートフォンを使うという。同校では、部活動が盛んで遠征に出る生徒も多いため、遠征先などですららを利用する生徒もいるというのだ。
一番の成果は英語。生徒からは“学ぶことが楽しくなった”という声も
札幌山の手高等学校では、すららを活用してから、どのような成果が出ているのだろうか。これについて中鉢教諭は「一番成果が出ているのは英語だ」と述べた。英検の合格率が向上したほか、全体的に受験する級も上がってきたというのだ。
中鉢教諭は英語の学習について、「今までは1クラスに違うレベルの生徒が混在し、それぞれに違うプリントを配布して学習を進めていました。ところが、今は学年でまとめて、何級の生徒にはこの宿題、という形で配信できるので教師の準備時間がかなり削減できています」と語る。教師の負担が減った分、生徒の学習内容や進捗状況に目を向けられるようになってきたというのだ。
また、すららを活用するようになってから、生徒の学習にも変化が出てきた。今まで学習習慣のなかった生徒たちも、出された宿題をこなすことで学習に取り組む時間が増えた。「全教員が関わる体制を作ったことで、生徒たちにも学習習慣ができてきました。今では、与えられた宿題だけでなく、自分でどんどん先に進める生徒や、校内で1位を取りたいという生徒も見られるようになり、学習に対する意欲が変わってきたことを感じます」と中鉢教諭は語る。
実際に、生徒たちにもすららの学習について話を聞いてみた。体育コース1年生の生徒からは、「中学のときは勉強が面倒に感じていたけど、高校の勉強は楽しくできるようになった」「英語の勉強は、紙のプリントだと発音が分からなかった。今は発音も聞くことができるし、書くことが減ったので楽しくなった」と率直な感想を話してくれた。
このように、すららの活用が定着している札幌山の手高等学校であるが、教師たちからは、「朝の10分を利用してすららを活用したい」「すららをもっと活用したいがタブレットがない」といった声が上がっているという。そのため同校では来年度から、iPadによる1人1台を実施し、ICTを活用した学びに取り組む方針を固めた。すららの個別学習がさらに活かされる環境が整備され、今後の成果にも期待できる。
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