2023年2月1日
辞書アプリDONGRIで1人1台端末の1年目に弾みをつける/長野県長野東高等学校
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1人1台端末の学習環境において、紙の辞書や電子辞書に替わり辞書アプリを選定する学校が増えている。2022年度から新1年生にChromebookを導入し、辞書アプリDONGRI(イースト提供)の活用も開始した長野県長野東高等学校。DONGRIの導入により生徒は辞書引きのスピードが上がったほか学習意識にも変化が生まれてきたという。現在のICT活用やDONGRIの利用状況など、牧内淳一教諭(国語科・高校1年担当)に話を聞いた。
生徒の可能性を拓く指導
1998年に開催された長野での冬期オリンピック。世界からアスリートを迎え入れた「エムウェーブ」の愛称で知られる巨大施設のすぐ目の前に長野県長野東高等学校はある。学校の設立は1974(昭和49)年。現在600名ほどの生徒が在籍している。
校是に「己を拓こう 眉あげて」を掲げる。「『なぜ学ぶのか』への共通理解を深め、受動的な知識蓄積型学習に留まらず、課題解決力・表現力・発信力・コミュニケーション力等を育むための授業改善を重ね、探究的な学びを創造する」など学習指導を推進している。国語科の牧内教諭は、「進学一辺倒にならず、多様な進路希望を実現できるサポートを本校ではしています。部活動や生徒会活動にも力を注ぎ、それらの活動を通して、自分自身を磨き、創ることを促進しています」と語る。
2022年12月に行われた第34回全国高等学校駅伝競走大会では同校の女子駅伝チームが全国優勝の快挙を遂げた。陸上部、体操部、競泳と水球を併せ持つ水泳部などもインターハイ出場の常連であるほど部活動の活躍が目覚ましい。
DONGRIでICT活用に弾みをつける
同校では2018年に普通教室に電子黒板を設置。GIGAスクール構想による高校の1人1台端末整備の動向を機に、2022年度から新1年生(200名)にChromebookを導入した。現2年生については2021年の後半に長野県から貸与されたChromebookを利用している。生徒全員がGoogleアカウントを持ち、日常的にGoogle ClassroomをはじめGoogle Workspace for Educationを活用。その他、AI教材や授業支援アプリなども取り入れて、ICT活用を開始して1年目、手探りながら少しずつ推し進めている状況だという。
現在は1年生のみだが、辞書アプリDONGRIも日々活用している。1人1台端末の整備ができたものの、当初はどこから手を付ければよいか思案していたという牧内教諭。しかし、「まずはDONGRIでChromebookを使う機会を増やしたいと思いました」と、DONGRIを使うことでICT活用そのものの勢いをつける意図があったと話す。また、家庭への費用負担の軽減も重視した。同校ではこれまで紙の辞書を活用していたが、国語科だけで少なくとも2~3種類が必要。英語科の辞書も加わって複数冊を購入するとなると費用もそれだけかさんでしまう。それに比べて辞書アプリは費用が抑えられることも魅力だった。同校で採用した辞書は「ウィズダム6辞書セット」(ウィズダム英和辞典、ウィズダム和英辞典、新明解国語辞典、三省堂 全訳読解古語辞典、全訳 漢辞海、大辞林)だ。
辞書アプリDONGRIは学習に必要な辞書や用語集を豊富に取り揃えている。DONGRIの辞書は1ライセンスで3台まで利用できるため、生徒は学校指定の端末に加え、自身のスマホや自宅のPCでも使える利便性がある。「しおり機能」「メモ機能」「履歴機能」など便利な機能がさまざまにあり、これらはクラウドを介して同期されるため異なる端末を使っていても学習の継続をスムーズに行えることが特徴だ。
ひたすら「語句調べ」、DONGRIで辞書引きに起きた変化
いつ頃から始まったのか定かではないが、同校では以前から「語句調べ」の習慣があるのだという。国語科では新しい単元に入ると最初に「語句調べ」を必ず行うスタイルが定着しており、牧内教諭も同校に赴任してからその慣例に習って踏襲しているという。
「たとえば、現代国語で語句調べは1時間かけて行っています。1~3年生まで同様です。課題のプリントを配布し、1年生はDONGRIを活用して取り組んでいます。解答は配布したプリントに手書きで記入してもらい提出としています。古典に関しても、その都度、必要に応じて調べ学習をしています」。プリントに20~30問を出題。漢字と語句を重点的に、生徒はひたすら黙々と辞書引きに取り組んでいるという。
以前は生徒によって持ち込む辞書がさまざまだったが、DONGRIの導入で辞書が統一され、調べた内容を共有することもできるようになった。また辞書引きに要する時間も短縮できている様子だ。「生徒がDONGRIを使って語句の見出しを表示するまでのスピードは早いですね。また、電子辞書も確かに手軽に使えますが画面が小さくてスクロールが多い。DONGRIは端末で見るので情報が見渡しやすく、使いやすいことが利点だと感じます」。
イースト社の調査によると、同校の8月を除く11月までのDONGRIの平均利用率は90%。これは他校と比較しても非常に高い数値だという。毎時間の授業でDONGRIを活用しているわけではないものの、英語科でもDONGRIは活用しており、何よりも同校の文化とも言える「語句調べ」でいかに集中的に使っているかがこの数値からも窺える。
ICTならではの機能で学習の振り返りにも有効
DONGRIには調べた語句に書き込みができる「メモ機能」や、過去に調べた語句を一覧で表示できる「履歴機能」など、学習がはかどる機能がいくつも搭載されている。中でも牧内教諭が好んでよく使うのが「まとめて検索」と「しおり機能」だという。
「まとめて検索」は、保有している辞書を一気に横断して検索することができる機能。検索の後は参照したい検索結果を選ぶだけ。辞書の切り替えなしに検索ができてとても便利だ。「生徒が国語辞典だけで調べて意味が出てこないという場合、『まとめて検索』でやってごらんとアドバイスします。大辞林もありますので、どこかで意味に当たります」。
「しおり機能」は、調べた単語を「しおり」と「タグ」で整理できる機能。「タグ」を付けておけば後で絞り込みが可能だ。覚えることが苦手な語句や何回も調べる語句には「しおり」を付けておくとすぐにジャンプできる。また、登録した「しおり」は時系列順に表示される。調べた語句を繰り返し復習するのにとても有効だ。「古典では、たとえば、上一段活用は数が限られているので全部タグを付けて検索しておいてと伝えています。そうすればいちいち調べ直さなくても、タグから辿ることができます」。必要に応じてこれらの機能を利用すれば学習効果が得られるだろう。紙の辞書とは異なる調べ方や整理の仕方はICTならではだ。
DONGRIがあれば「すぐに調べられる」
牧内教諭が生徒に実施したDONGRIの使用感についてのアンケートでは、「辞書の持ち歩きがなくなりラクになった」という感想のほか、「わからなければすぐに調べられる」「使いやすい」といった声が寄せられたという。DONGRIが身近な存在として定着し、辞書を使うことに対する積極性や学習意欲も促されているようだ。結果として、能動的な学びや牧内教諭が意図したICT活用の活性化にも結びついていると言えるだろう。
一方で、牧内教諭はICTのみに偏り過ぎることの懸念も説く。前述のように、「語句調べ」を手書きで解答させることの効用について「実際に手で書かないと頭に入っていかないこともある」と指導観は揺るがない。テキストを打ち込む学習も視野に入れながら、ICT活用とアナログの手法との棲み分けは今後も大切にしていきたいという。
今後は、さらにDONGRIを活用する授業づくりを探っていきたいと話す牧内教諭。目下のところ「語句調べ」で多用しているが、他のアプリケーションとの連携など授業改善を図りたいという。
新しい教育への転換の真っただ中にある同校。DONGRIとともにICT活用に先行して乗り出した1年生のノウハウを、この先、全学年に行き渡らせていく。1人1台環境の学びの最大化を目指しながら、2年目に向けて、生徒の可能性を拓く指導はいっそう色濃くなっていきそうだ。
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