2013年12月10日
国際公共経済学会/武雄市教育監ら「2025年のデジタル教科書」を語る
国際公共経済学会は7日と8日、シンポジウム「第28回研究大会」を横浜市の慶応大学日吉キャンパスで開催した。
「2025年のICT」をテーマとしたこのシンポジウムは、インフラ、税制、医療、教育、環境等社会全般にわたり、これから10年あまり先のICTを見通すことを目的としたもの。5つのパネルディスカッションや研究部会セッション、一般報告などに、学校関係者や各分野の専門家、学生らが参加した。
8日には、「2025年のデジタル教科書」と題したパネルディスカッションを開催。CANVAS石戸奈々子理事長がコーディネーターとなり、関西大学 白石真澄教授、武雄市教育委員会 代田昭久教育監と慶応義塾大学 中村伊知哉教授がパネリストになり、デジタル教科書の現状とこれからについて、意見を交わした。
始めに代田教育監が、2014年度から全小学校へのデジタル教科書導入などで注目を集めている武雄市の先進的な取り組みについて説明。Dittの会長も務める中村伊知哉教授が、デジタル教科書をめぐる政府や関係省庁などの動向を紹介した。
ICT機器が導入され、学び合いを重視した授業へとシフトしていく中、これからの教員に必要なこととして、代田教育監は「教員が正解を教えるという呪縛から変化すべき」とし、“ファシリテートする能力”の重要性について述べた。杉並区立和田中の例を挙げ、話し合いを重視した授業スタイルにより議論の仕方が上手になるなど効果があることを示した。
少子高齢化やバリアフリーに関する専門家である白石教授は、デジタル教科書導入により、特別支援学校での活用、教育格差是正、語学力の向上といった効果が期待できると話す。
また、反転授業について武雄市教員の約三分の一が反対の立場をとるという現状を受け止め、代田教育監は「授業を行う前に先生方は狙いとまとめを想定して授業に臨む。しかし、デジタル教科書を使うことで全員の意見が“見える”ようになり、時間内に全てをまとめきれない状況がある」とし、想定外のことが多いなかでの対処の難しさを語り、教員への理解を示した。
既定の授業から新しいスタイルへと大きく変わる可能性を秘めた反転授業だが、まずは反転授業へ反対する教員から理解を得られるよう、武雄市の児童は県平均と比べて予習時間が少ないといったデータを示しながら、下調べを家でやり授業で発展させるという“武雄式の反転授業”について現場での地道な説明を行っていると話す。
また、反転授業の課題として、児童らが家で動画の予習をするというハードルの高さがある。それについて、代田教育監は「最大の課題は飽きられてしまうこと。そのための対処として、SNSを活用し楽しんで取り組める工夫を考えている」と述べ、さらに、全国に小中校は約3万校以上あるが、まずは300校がデジタル教科書導入を進めれば状況が大きく変わるきっかけになると語った。
最後に中村教授が、グローバルに活躍する子どもたちの将来のためにも、デジタル教科書導入の決断の時期にきていると力強く語った。
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