2016年7月21日
私学アンケートの結果から「ICTは導入したけれど・・・宝のもち腐れ?」
私学アンケートの結果から「ICTは導入したけれど・・・宝のもち腐れ?」
~千代田女学園の失敗とリスタート~
ICT教育ニュースでは、3月から4月にかけて東京、神奈川、千葉、埼玉にある私立の小中高等学校約830校を対象に、アンケート調査を行った。年度替わりの多忙な時期だったためか、回答率は5.7%と低調ではあったが50校近くから回答を得られた。ICT導入状況に関するある程度の傾向は把握出来たと判断して報告する。
アンケート結果から
はじめに、ICTツールの導入については、61%が「導入済み」、37%が「調査中・検討中」という回答で、ICTツールの導入の流れは必然的なようだ。
ICT導入に関する体制作りでは、「ICT担当者が決まっている」48%、「プロジェクトがある」33%(複数回答あり)、「検討中」が26%、「やる予定がない」が7%となり、ほとんどの学校で導入に向けて具体的な活動をしていることが分かった。
導入したツールの内容は、「電子黒板・プロジェクター」が83%、「実物投影機」が54%、教師用端末が33%、児童生徒用端末(普通教室用)は39%だった。導入台数や導入方法、1人1台タブレット配備状況まで調査できなかった。
導入している端末の種類では、教師用がWindows 37%、iPad 53%、その他 10%。児童生徒用がWindows 28%、iPad 61%、その他 11%という結果だった。
普通教室への無線LAN(Wi-Fi)の設置状況では、50%が設置済みと回答。全教室への設置を完了しているのはその3分の1で、全体の15%だった。
41%の学校では、校務用、授業支援用、学習用などにアプリを使用しており、「Siems」、「ロイロノート」、「Classi」、「スタディサプリ」、「MetaMoji」などの名が挙げられた。
デジタル教科書については、教師用、児童生徒用併せて導入しているのは17%、ほとんどが英語科と数学科での利用だった。
ICT導入に関する課題について訊いたところ(複数回答)多かったのが、「予算の確保」30%、「導入後の運用」30%、「教員のスキルアップ」30%、「導入後の成果が不明」28%という答えだった。
ICTは宝のもち腐れ?
アンケート全体から推論できるのは、ICTはひとまず導入してみたが、運用方法が確立できず、教師のスキルアップもままならず、導入の成果も見えにくいということのようである。あくまで推論であり、具体的な意見はないものかと自由コメント欄をチェックしていたえらこんなコメントが寄せられていた。
「本学園がICT推進に向け、抱える課題がいくつかあります。“iPadを数年前に導入したものの、うまく活用できていない”、 “iPadに対して、目的と手段をはき違えている” 、“機材を導入しても、その後の取り組みが甘いため宝のもち腐れ”」。
まさに、推論したアンケート結果そのものではないか。早速、コメントを送ってくれた千代田女学園中学校・高等学校 情報科の杉村 譲二教諭を訪ねてみることにした。
千代田女学園中学校・高等学校のICTの導入状況は、PC教室の他に生徒用iPadが36台、中学校の3クラスに電子黒板を設置、Wi-FiはPC教室や図書館、一部の教室や職員室で利用可能な状態。今年度からの取り組みとしてはクラウド上にコンテンツを置いて、学習用に利用しているという。入試のセンター試験の問題や過去問題や、社会科の地図など、授業での活用を図っている。
杉村教諭が“宝のもち腐れ”と感じているのは、図書館に置かれたiPadのことだ。iPadを導入したのは、2012年9月とかなり早い。
導入当時の状況について杉村教諭は「導入した目的はICT教育を推し進めよう、iPadを活用しようということでした。導入当初は写真や動画を撮って使おうとか、屋外に持ち出して観察記録等に使おうなど、いろいろなアイディアが出されたのですが、それをどのように授業で活用していくのか分からずに具体的に進めることが出来ませんでした。結局、宝のもち腐れなってしまったところはあると思います。私は情報科の担当ですが、赴任して間もなかったため積極的に関われなかったのが残念です」と、悔しさをにじませる。
続けて杉村教諭は、目的と手段をはき違えてしまったことが、スタート時点の躓きになったのではないかと説明してくれた。「とにかくiPadを使わなくてはいけないからと、iPadを利用することが目的になっていたように思います」。
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