2016年8月24日
NII、学校ポータル基盤システムNet Commonsのセキュリティを強化
国立情報学研究所(NII)は、NPOや教育機関等のユーザーに向けたイベント「Net Commonsユーザカンファレンス2016」を23日に東京・千代田区の一ツ橋講堂で開催した。
はじめに、国立情報学研究所 新井紀子社会共有知研究センター長が、“これからの学校Webシステムに求められること”をテーマに講演を行い、31日にリリース予定の「Net Commons3.0」で改良を行った点などについて語った。
Net Commonsは、CMSとLMS、グループウェアを統合したコミュニティウェア。オープンソースとして2005年に公開し、メルマガ配信・管理やお知らせの掲示、ファイル保存や予定表管理等、様々な機能(モジュール)を備えている。
新井センター長は今回リリースする3.0のポイントについて、“セキュリティ“だと語る。セキュリティ面を重視した理由について、「ホームページの改ざん等、学校や企業・団体が公開しているサーバへの攻撃は、過去3年間、悪化の一途を辿っており、今後さらに過熱化すると予想されます。こうしたことを受け、情報処理推進機構(IPA)からは、サーバに入っているソフトウェアを最新にできない場合は閉鎖を検討してほしいというアナウンスも出ています。しかし、サーバに入っているOSやソフトウェアの数は、数百・数千に及ぶこともあり、常に最新にしておくのは非常に難しい。もちろん最新であることだけでなく、問題なく動作することが必要です。こうした対応は、資金の少ない学校や公共機関ではおそらく実現困難でしょう」と説明した。
学校で扱う情報には、児童・生徒の住所・電話番号の他、成績や家庭環境など個人的なものまで様々にある。個人情報の山ともいえる学校には、さらに厳しいセキュリティが求められるはずだ。
そこで今回リリースする3.0では、テストコードを付けた本格派CMSをめざした、と新井センター長。「厳しいセキュリティ体制が求められる状況下で、国立情報学研究所としてはすでに3500団体以上に導入されているNet Commonsを通じ、学校や公的機関へ、最も負担無くすべてのソフトを最新にアップデートできる基盤を提供したいと考えました」。学校で利用されるCMSとしては、OSやソフトウェアの更新を維持するためのテストコードが付いたものは他に例をみないという。
次に、開発に関わったNet Commonsプロジェクトのメンバーが登壇。スマートフォン等でも閲覧しやすい「レスポンシブデザイン」、「コンテンツの承認」と「権限の委譲」の3つの特長を上げて3.0について紹介したのち、開発に関わった担当者が個々の機能(モジュール)について解説した。
また、中会議場ではポスター・展示セッションを開催。Net Commonsを職員ポータルサイトとして利活用している聖学院大学や、施設展示の様子をWebで体験することのできる「iライブラリー」を開発・導入した国立特別支援教育総合研究所、クラブ活動の情報共有ツールとして利用を進める八千代松陰学園など、様々なスタイルの導入事例が紹介されていた。
国立情報学研究所では、今回のNet Commons 3.0リリース後、2017年夏をめどに全てのプラグインを実装し、多言語化に対応した3.1をリリースする等、今後も学校や公的機関へ向けた情報共有基盤の提供に貢献していきたいとしている。
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