1. トップ
  2. ICT活用レポート
  3. タブレットで他者の書き込みを閲覧できることと学習意欲の関係

2018年5月7日

タブレットで他者の書き込みを閲覧できることと学習意欲の関係

【PR】MetaMoJi ClassRooomを活用した個別学習とアンケート調査
東京学芸大学 自然科学系 技術・情報科学講座 情報科学分野 北澤 武

小学校の新学習指導要領(平成29年3月公示)には,「情報活用能力の育成を図るため,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。」と記述されている。そこで,各自治体では,1人1台タブレット端末を目指した環境整備が行われている。

東京学芸大学 自然科学系 技術・情報科学講座 情報科学分野 北澤 武

東京学芸大学 自然科学系 技術・情報科学講座 情報科学分野 北澤 武

1人1台のタブレット端末を用いた授業は,一斉学習,個別学習,協働学習が考えられるが,1コマの授業の中で常に同じ学習形態というわけではなく,場面に応じて様々な学習形態が展開される(文部科学省 2014)。ここで,個別学習の授業形態に着目すると,個人が思考する場面において,ネットワークを介して他者の書き込みをリアルタイムに閲覧することによって,自分の考えを持つことができるようになると予想される。

一方で,自分の書き込みが他者から見られる環境が,結果的に学習意欲に影響を与える可能性が否めない。そこで,1人1台のタブレット端末環境の個別学習の場面において,自分が気づかないところで自分の書き込みが見られることと,自分が他者の解答を閲覧できることが,児童の学習意欲にどのような影響を与えるかについて分析した。

MetaMoJi ClassRoomを活用した個別学習とアンケート調査

小学校5,6年生の20名に,MetaMoJi ClassRoomを活用した個別学習に取り組んでもらった。学習課題は,他者の書き込みの閲覧が単なる答え合わせになってしまうことを避けるために,多様な解法が考えられる長方形を組み合わせた図形の面積を求める問題とした。

学習の手続きは,1)タブレット端末に表示された問題に自分の解法を記述,2)他者の書き込み内容を自由に閲覧できる機能を用いて,他者の考えを閲覧,3)必要に応じて,自分の考えを加筆・修正する流れとした。

アンケート調査は,児童が他者の書き込みを見たくなる時(または,見たくない時)の心情を調べるために,「友達の解答を見たくなる時(見たくない時)とは,どのような気持ちになった時か」について,自由記述で問うた。これに加えて,興味や知的好奇心などの質問項目について回答を求めた。

img1img2

 

 

 

 

アンケート調査の結果から分かったこと

児童が他者の書き込みを見たくなる時として,「答えが分からない時(6名,30%)」,「不安になった時(4名,20%)」が,複数人から得られた回答であり,全体の半数を占めていた。一方,児童が他者の書き込みを見たくない時として,「答えが分かった時(3名,15%)」,「答えに自信がある時(5名,25%)」,「自分で(最後まで)解いてみたい時(4名,20%)」が,複数人から得られた回答であり,全体の60%を占めていた。

「自分の解答を友達に見られるのが嫌であったか」という質問について,17名が否定的,3名が肯定的な回答を示していたことから,自分の解答を友だちに見られても嫌ではないという割合が大きいことが分かった。しかしながら,既習内容ではなく,難しい問題であると他者に見られたくないという考えになるかもしれないため,学習課題の難易度に応じて,他者の考えを見られる設定にすることが重要と考える。

また,「友達の解き方を参考にして,新しい解き方を考えようとしたか」という質問について,15人が肯定的,5人が否定的な回答を示し,肯定的な回答の割合が大きいことが分かった。このことから,友達の画面を閲覧できる環境にすると,友達の解き方を参考にしながら,自分がもともと持っていた考え方にさらに新しい考え方を追加するという意識が高まる可能性が示唆された。

おわりに

小学校の新学習指導要領(平成29年3月公示)では,「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」が求められている。個別学習の場面において,タブレット端末で他者の書き込みを閲覧する活動は,自分の考えを持つことが難しい児童にとって有益な手段となるだけでなく,この活動をきっかけに他者がなぜそのような書き込みをしたのか,実際に対話しながら,自身の学びを深めるきっかけになるかもしれない。また,このような活動を繰り返していくことで,学習課題の難易度に関わらず,他者から自分の書き込みを閲覧されることに慣れていくかもしれない。

今後,実際の授業場面を通じて,児童の意識がどのように変化するか,長期的に分析することが求められる。

【引用文献】
本記事は,下記の論文の内容をもとに執筆した。
北澤武,飯塚康友(2016)タブレット端末で他者の書き込みを閲覧できる個別学習の環境が児童の学習意欲に与える影響.日本教育工学会研究報告集 16-5,pp.89-94

関連URL

文部科学省(2017) 小学校学習指導要領(平成29年3月公示)

文部科学省(2014) 学びのイノベーション事業実証研究報告書

リアルタイム授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」

MetaMoJi 学校での導入事例

自立学習と学力向上に効果創出 活用事例多数紹介 すらら 活用事例のご紹介
AIRobot-NEWS AI・ロボットニュース

アーカイブ

  • 無線通信可視化・安定化ソリューション Tbridge
  • Class Magic
  • ICT要員派遣はおまかせ! ICTまるごとサポート 詳細はこちら
  • 事例紹介作って掲載します。 ICT教育ニュースの楽々 事例作成サービス