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2021年11月25日

「古典って何のためにやるの?」Chromebook で本質をつく学びを / 清風学園 清風中学校・高等学校

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「ICT教育」そのものが主語になってはいけない

清風学園 ICT室責任者 根岸太郎氏

学校では、GIGAスクール端末の配備や、インフラ整備が着々と進んでいる。このような「(ICTを)使わざるを得ない」環境を作るのは、その推進において有効的なアプローチの一つだ。しかしこうしたケースでは、「ICT教育そのものが主語にならない」発想も大切だ。清風学園(大阪市)、および同校のICT室責任者根岸太郎氏もそう考える一人である。

根岸氏は言う。「ICTは道具にすぎず、子どもたちの選択肢を広げるための手段の一つ。ICTに何かを与えてもらうのではなく、ニーズや課題に応じて主体的にそれを“使う”発想が大事だというのが本校の考え方です」。

ICTに何かを与えてもらうのでなく、その本質を学ぶ

「財」の教えが盛り込まれた珍しい教育目標

清風学園は、関西でも屈指の進学校として知られるが、「それ以前のこと」を大事にするのが特長だ。例えば「徳・健・財」と掲げた教育目標における、「財」は特に個性的だろう。文字通りお金のことで、「お金を大事にし、活きた使い方をしなさい」という教えである。学校が「お金」に言及するのは非常に珍しいと思えるが、根岸氏はこう説明する。

「本来は生きる上で不可欠な『お金』という存在を、学校ではまるでタブーのごとく扱い、触れようとしない風潮があります。しかし、それはかえって不自然なことだと思いませんか? こうした点にも表れているように、本校は何事においても『本質』を大事にする学びを追求したいのです」。だからこそ「ICTは道具であり手段。それに何かを与えてもらおうとしない」という発想をするのである。

例えば同校では、パソコンを分解して、HDやメモリなどそれぞれの部品の役割を学ぶといったユニークな特別授業にも取り組んでいる。「ICT端末を使う以前に、端末とは何か」という“本質”を理解するためだ。オバマ元大統領は、STEM教育を米国の国家戦略とする際のスピーチで、「ゲームに遊ばれるのではなく、それを作る側に回りなさい」と説いたが、同じ発想だと言えるだろう。

Python使用環境、クラウド、小型で堅牢、安価という条件を満たした Chromebook

ASUS Chroomebook Flip C214MA

そのため学校のICT化においても、それ自体を目的とはしていない。端末の選定も、あくまで“本質”に基づいて決めた。採用したのは Chromebook(ASUS社製)。Google の独自の「Chrome OS」を搭載したノート型デバイスだ。タブレット端末という選択肢もあったかもしれないが、同校での用途において何が必要か客観的に判断した結果、今回条件を満たしたのが Chromebook だったというシンプルな理由だ。

第一の理由となったのが、Pythonを使ったプログラミング学習を行っていたこと。そのためキーボード入力ができることは必須で、かつ専用のテキストエディタ・IDLEを使用するためのLinuxオプションへの切り替えが容易であることが条件だった。

加えて、当時はコロナ真っただ中。生徒が自宅に持ち帰ることを考えると、小型で堅牢性が高いことも欠かせない。クラウドでデータ保存する仕組みも、一元管理する上で便利だった。さらに端末は各家庭で購入となるため、価格も重要だ。その点 Chromebook はタブレットよりも安価で、中でもコストパフォーマンスに優れた ASUS Chromebook Flip C214MA に強い魅力を感じた。

Chromebook で、教科書の内容と自分の伝えたいことをリンクさせる

清風学園 国語科・小牧佳樹教諭

もちろん、プログラミング学習はきっかけに過ぎず、教室では Chromebook を用いて多様な授業が実践されている。この日行われていたのは、小牧佳樹教諭による中1の古典(国語)の導入授業だ。日本古来の月の名前の由来を自分たちでネット検索し、シェアしながらまとめていくという内容で、例えば「1月は正月に家族や親戚が集まって睦み合うから睦月」といった具合だ。

小牧教諭はそのねらいをこう語る。「同じ授業単元でも、以前は時間や物理的な手間の問題で、教科書を書き写すことぐらいしかできませんでした。しかし生徒にとってそれは、苦痛な“作業”でしかありません。そこで Chromebookを 使ってインタラクティブに行うことで、楽しみながら学びの意義や価値を感じてもらいたかったのです。ICTを活用して、教科書の内容と自分が教えたいことをリンクさせるイメージです」。

調べたことを自ら「発表したい」という姿勢を見せる生徒が増えた

授業の最後に生徒たちに伝えた印象的な言葉が、その想いを象徴している。「今日みたいに、国語を通して日本の文化・感性をとらえることができる学問、それを『古典』と呼びます」。なるほど、ともすれば「何のためにやるのか分からない」と嫌われがちな古典も、こんなふうに教えられたら、意識も変わりそうだ。「そもそも国語とは、文字や文章から何かを『読み取る』学問です。そういうことを伝えたいですね」(小牧教諭)。つまり、古典・国語という学びの“本質”である。

他にも、コロナ禍で声を出して歌うことができなくなった音楽の授業では、デジタル教科書の音声機能を用いて「音のリアリティ」を体験できるようにした。さらに体育では、バレーボールのフォーメーションの説明にも活用している。以前はホワイトボードに絵を描いていちいち動きを説明していたが、ポジショニングの移動をアニメーションで示すなど、簡単にシミュレーションできるようになった。その効果で、最近は生徒たちも自ら戦略を考えてPDCAで回すなど、強い主体性を見せ始めている。いずれも、その学びや活動の“本質”を掘り起こそうとしているのだ。

学校とは、生徒の選択肢を増やすための場所

授業中に「考える」ことが増えたと言う寺澤可惟くん(中1)

生徒たちの反応も非常に良く、「今日は Chromebook 使わないの?」といった声が頻繁に聞かれるようになった。中1の寺澤可惟くんは「自分で考えること、調べることが楽しい。板書をノートに写していただけのときとは全然違います」と言う。小牧教諭の伝えたかった“本質”は、着実に定着しつつあるようだ。

こうした生徒たちの変容もふまえ、根岸氏は力を込めてこう語る。「繰り返しになりますが、ICTは生徒の将来の選択肢を増やすためのツールに過ぎません。そもそも学校とは、子どもたちの選択肢を増やすための場所。学びのコミュニケーションは、五感でやるべき。知識の定着だけなら学校に来なくても可能な時代に、それでも学校へ来る意義がそこにあり、その道具として Chromebook を使っていきたいです」。

「学びの本質を届けたい」と語る根岸氏(左)、小牧教諭(右)

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