2017年5月8日
聖望学園、途切れる無線LAN問題を解消した1人1台タブレット授業
ICT活用といえば、はじめに無線LANと1人1台タブレットが定番といえる。だが、ICT活用先進校の多くで無線LANが使えない、使いづらいというトラブルが発生し、そのことでICT導入に腰が引けてしまうという関係者も多いという。
同様のトラブルを経験し、新たな無線LANを導入した学校が公開授業を行うというので訪ねてみた。
公開授業を行ったのは、今年度にバッファローの無線LANアクセスポイント「WAPM‐2133TR」を導入した、聖望学園中学校高等学校。1人1台タブレットを使用した中学2年生の授業。
聖望学園は埼玉県飯能市にある私立中高一貫校。現在、中学校は156名、高等学校は1037名の生徒が在籍する。2016年から中学校にiPadを導入し、1人1台タブレット授業の環境を構築、2017年から新たに電子黒板も導入し、ICTを活用した授業を日常的に実践している。
しかし、タブレット授業をはじめた昨年は、授業中に通信が突然止まるトラブルに見舞われていた。教員のタブレットの通信が止まり黒板を使ったアナログ授業に戻るケースや、生徒のタブレットの通信が数分にわたって途切れるといった問題が生じていたという。こうした状況を、中学校2年B組担任の永澤勇気教諭は、「ICT → いつも ちょっと トラブル」と表現。「ログインできない」「アップデートできない」などをいかになくしていくかが課題だったという。
これらの問題を解消したのが、今回新たに「DFS障害回避機能」や「トライバンド」などを搭載した無線LANアクセスポイント「WAPM‐2133TR」だ。
公開授業が行われたのは中学2年生の数学。教室に入ると黒板の上方の壁に「WAPM‐2133TR」が設置されていた。生徒には1人1台タブレットがあり、3~5名のグループにわかれた学習スタイルだ。
単元は一次関数。教員が手元のタブレットに文字などを書き込むと、生徒のタブレットにもそれが一斉に表示される。生徒は、問題が提示されると各自のタブレットに解答を指先で書き込んでいく。まずは自分だけの作業。その後、グループ内で声かけがはじまった。「D1じゃない?」「え?!待って!」「右に1いって…」とお互いのタブレットや顔を見合わせながらの教え合い。どのグループも自然と自発的に会話が生まれ、アクティブ・ラーニング的な学びが展開されていく。
全員の解答は電子黒板に一斉表示され、教員は生徒の進捗や正誤を確認できる。タブレットと電子黒板が連動し、双方向にリアルタイムで情報を見ることができる。
教員が解答までのプロセスを電子黒板で説明する際は、「ちょっと見てください」とタブレットに向いた生徒の視線を電子黒板へと促す。必要に応じてICT機器を使い分けたとても自然でスムーズな授業だ。
次々と出題される問題を解く生徒の表情に集中力の高まりが伺えた。数字を書いたり、線を引いたり、タブレットを操作する指先の動きは驚くほどなめらかで速い。
そしてこの間、通信が途切れることはなく、授業の進行を妨げるものは何もない。淡々とあたりまえに授業は進んでいく。途切れない通信が、生徒の集中力をバックアップしているようだ。
無線LANをはじめて導入した昨年の「通信が中断する」トラブルは、聖望学園が位置する地域の特性にあった。「バッファローのフィールドエンジニアによる現場調査で、周辺に航空レーダー波を発する施設が点在する同校の環境により、DFS障害で無線LANが一時的に停止することが判明した」とバッファロー ネットワーク事業部 製品企画担当 柴田成儀氏は説明する。
DFS(Dynamic Frequency Selection)とは、アクセスポイントが電波を発信しているとき、同じチャンネルに気象・航空レーダーなどのレーダー波の干渉があった場合、干渉しないチャンネルに移動しなければならないことで、法律で義務付けられている。従来品では、チャンネルを移動する際、移動先にもレーダー波があってはいけないので60秒間の監視をしてから移動する仕組みだった。この間は無線を停止して監視する必要があり、通信の中断が生じていたという。
これを解消したのが、干渉しないチャンネルを常に監視・把握し、レーダー波を検知した際に、瞬時にチャンネルを移動できる「DFS障害回避機能」。同機能により、地域周辺の状況に左右されず、「途切れない授業」が実現した。
バッファローの調べによれば、同社の全国7事業所で行ったDFS障害の発生状況の調査で、札幌、東京、名古屋の地域でレーダー波が数回に上り検知されたという。レーダー波の影響は全国で起こり得る事象でもある。教育のICT化の普及が進むにつれて、DFS障害回避の有効性はますます重要視されていくだろう。
また、もう一つの注目は「トライバンド」という機能。バンド(帯域)が3つあるという意味で、5GHz が2つと2.4GHz が1つで合計3つのバンドを同時に使うことができる。一般的に同時に接続する機器が増えると通信速度が低下するが、5GHzが2つあるため、タブレットが複数台あると、自動的に通信を振り分けて負荷を分散。
従来機はチャンネルが5GHz と2.4GHzが1つずつであり、タブレット1台あたりで比較すると、理論上2倍の通信速度が出せるという。「トライバンド」の安定した通信で、全員同時に、よりサクサクと学習できる快適な環境になった。
授業後、生徒2人に紙のノートとタブレットではどちらが使いやすいかを尋ねたところ、2人とも「タブレットのほうがラク」との回答だった。「いつも ちょっと トラブル」では、ラクなはずの動作も困難が生じて何かとストレス。トラブルがなくツールが使いやすければ、より本来の学びに注力ができることだろう。効果的なアクティブ・ラーニングの実現や生徒の集中力を中断させない環境づくりに、途切れない無線LANの果たす役割は大きいといえる。
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