2022年1月14日
久留米高専、「テクノネット久留米」の支援で「産業・技術遺産のデジタル・アーカイブ化」に取り組み
国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校は12日、同校を支援するために設立された技術振興会組織「テクノネット久留米」が行っている研究・開発シーズ育成奨励事業による支援を受け、「産業・技術遺産のデジタル・アーカイブ化」に取り組んだことを発表した。
図書館や博物館に収蔵されている文化財や資料、産業界において生み出された多くの歴史的な製品・装置・部品及びその設計図などを含めた「現物」は経年劣化が避けられない。また企業等においては、保管場所やコストなど問題からすべての製品等を保存・承継し、後世に伝えることは非常に難しいのが現状。
こうした産業・技術遺産の永久的な保存を図るための手段として、「デジタル・アーカイブ」がある。デジタル・アーカイブとは、現物による保存では避けることができない経年劣化を電子データとして記録・保存することで劣化を無くし、保存・蓄積・複製が容易に行うことができる方法。現在、大きな博物館などでは、インターネットなどを通じて時間的・距離的な制約を超えて広く公開ができる手法として様々な文化財や美術作品、学術資料のデジタル・アーカイブ化が進められている。
産業界において生み出された技術遺産は、その多くが企業によって保管されている。また、機構部品の摩耗や交換部品の生産終了など保全をめぐる諸問題を各企業で解決するのは難しい現状がある。
今回、久留米高専技術振興会「テクノネット久留米」による研究・開発シーズ育成奨励事業の支援を受け、地元中小企業に保管されている技術遺産の保全に活用できるよう、手軽なデジタル・アーカイブ化手法確立に取り組んだ。今回のアーカイブ化の特徴は、技術遺産を対象とすることから機械の仕組みをコンピュータ上での再現を主眼としていることにある。アーカイブ対象を現物ではなくその技術遺産において実現された仕組みとすることで、アニメーション・透過モデルによる解説やデジタルものづくり機器を利用した動作モデルの作成などデジタルデータの「必要に応じて編集を加えることができる」、「共有・複製が容易」といった特徴を生かすことができるという。
アーカイブ化の第一歩として、久留米工業高等専門学校で長年展示に使用されてきた蒸気機関車模型を対象に。この機関車模型は地元久留米で活躍した「からくり儀右衛門」こと田中久重が佐賀藩藩主・鍋島直正の命により製作した国産第一号蒸気機関車模型がモチーフ。機関車模型を分解・計測し、部品一つ一つをCADソフトウェアによりデジタルデータ化する。デジタルデータ化した部品をコンピュータ上で組み立てることで内部の構造や動作原理を確認することができる3Ⅾモデルとすることができたという。
また、江戸時代の技術啓蒙書である「機巧図彙(からくりずい)」に記載された図面をもとに「品玉人形」というからくり人形の3Dモデル化にも取り組んでいる。品玉人形は、手品をするからくり人形で枡を、持った人形が床に置かれた小物に枡を伏せては持ち上げるという動作を繰り返すと小物が次々と変化する。「機巧図彙」の図面を参考に機構を考えながらコンピュータ上で設計。3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルものづくり機器での製作を前提とした設計とすることで、これらの機器があれば誰でもからくり人形を復元できるように目指しているという。
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