2016年8月3日
「デジタル教科書は“紙と同一”に」!? DiTTで中間まとめを語る
デジタル教科書教材協議会(DiTT)は、シンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?~2020年導入実現に向けて」を7月25日に慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールで開催した。
「『デジタル教科書』の位置づけに関する検討会議」の中間まとめが6月に発表され、導入実現に向けて議論が本格化するなか、現況と今後について話し合うシンポジウム。ベネッセホールディングス ベネッセ教育総合研究所 新井健一理事長、光村図書出版 黒川弘一専務取締役、総務省 情報流通行政局情報通信利用促進課 御厩祐司課長と、DiTTの中村伊知哉専務理事、片岡靖参与、石戸奈々子事務局長が参加した。
はじめに検討会議の座長も務める堀田教授が中間まとめに関する報告を行った。
堀田教授はまず教科書の定義について、「教科書とは国が年間400億以上の予算を割いて義務教育に無償提供」しているものだと述べ、課題は「学校現場では“指導者用デジタル教科書”が広く使用されつつあるが、これは法的には教科書と認められていない。そして、いま議論されているのは子どもが持つ紙の教科書をどのようにデジタル化するかという点」だとした。
また、デジタル教科書の定義を巡る議論について、“端末とコンテンツはセット”“ビューアーはどうなのか”“OSは何にするのか”など色々な意見があるが、検討会議としては「“内容”をデジタル教科書とすること、つまり“紙の教科書と同一”のものをデジタル教科書と見なす」方針だとし、動く機能やリンク機能は教科書に含まれないと語った。続けて検討会議の経緯について、2015年5月に初会合を行い様々な議論を経て今回の発表に至ったと説明。今冬には“最終まとめ”を発表する予定だという。
最後に今後の課題として、タブレット1人1台や無線LANなどデジタル教科書を使用するための環境整備、そしてデジタル教科書制作のコストにも大きく影響を与える著作権の問題を挙げた。
この報告を受けて、光村図書出版 黒川専務取締役は、「中間報告以降、デジタル教科書の捉え方が変わってきている。検定教科書である“デジタル教科書”と様々な機能を持つ“デジタル教材”とをいかに連携させていくのか、それらを検討するフェーズになっている」と語り、他のパネリストからも同様の意見が挙った。
続いて、課題の一つである教育現場の環境整備についての議論が行われた。教育用PCの普及率は2015年3月時点で、児童・生徒6,4人に1台。今後、各地域の教育委員会が予算化し導入を進めることになるが、気になる点は自治体ごとの普及率のばらつきだという。すでに1人1台を達成している自治体がある一方で、まだ取り組み自体を始めていないところもある。
総務省の御厩課長はこの点について、「導入が進まない自治体は財政力がないからと言われることがあるがこれはエビデンスがない話であり、文部科学省と総務省のデータを元に調査したところ、例えば財政力のある中部地域のある村での普及率は8人に1台といった状況」だと述べ、普及促進には首長の理解が重要だと語った。
著作権の問題については、文化庁「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会」の委員も務める中村専務理事がデジタル教科書と著作権の問題はセットの課題だと述べ、「現在、文化庁の審議会でも議論が行われている。デジタル教科書については、おそらく文部科学省の“最終まとめ”の内容を受けて具体的な議論が進むだろう」とした。
次いで、無線LAN環境の整備に関して御厩課長が総務省の取り組みについて説明した。総務省は5月、全国の学校に無線LAN導入費用の補助を検討していることを発表した。学校等の施設は災害時に防災拠点となるため、避難者らがLAN環境を利用することができるよう整備を進める。また、これは平時でも利用可能となるため、学校でのICT教育に活用することができるという。
こうした動きを受けて、DiTTの中村専務理事は「端末整備は自治体がしっかり取り組み、デジタル教科書は文科省の審議の進み具合と文化庁との連携、LAN環境は総務省の取り組み」といったように、それぞれの方向性が明確となってきたと語った。
2017年に小学校、翌2018年には中学校の教科書検定が行われる重要なこの時期、国や地方自治体、企業それぞれの課題が明らかになり、学校のICT化推進に一層の弾みがつくことだろう。
関連URL
最新ニュース
- CFC、「能登半島地震で被災した子どもの学び実態調査」の結果を発表(2024年11月22日)
- 親が選ぶ子どもに通わせたいプログラミング教育の条件とは? =「プロリア プログラミング」調べ=(2024年11月22日)
- ザクティ、長野県池田工業高校の遠隔臨場体験でウェアラブルカメラが活躍(2024年11月22日)
- 北九州市立大学、高校生向けテクノロジ・イノベーション教育事業「GEEKKイニシアチブ」を開始(2024年11月22日)
- ICT CONNECT21、水曜サロン 安藤昇氏「生成AIで変わる教育の未来」12月4日開催(2024年11月22日)
- 朝日出版社、デジタル・文法指導セミナー「CNN Workbook Seminar 2024」大阪・福岡で開催(2024年11月22日)
- 「未来の学習コンテンツEXPO 2024(冬期)」12月25日開催 企業の協賛案内を開始(2024年11月22日)
- キャスタリア、「ケニアの教育とICTの未来を考える特別セミナー」を開催(2024年11月22日)
- Mulabo!、小学5・6年生対象「親子でプログラミングを体験しよう!」12月横浜で開催(2024年11月22日)
- 教育プラットフォーム「Classi」、「学習トレーニング」機能内に動画を搭載(2024年11月22日)