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2016年4月4日

「Amazingな学びを創ろう」 ~愛和小学校・松田校長2年半の挑戦~

「Amazingな学びを創ろう」
~愛和小学校・松田校長2年半の挑戦~

インタビューの冒頭。「手当たり次第やってきましたよね」と、不躾な質問をしてみた。
「手当たり次第かぁ」、松田はそう言って、少し沈黙した。
「それだと、何も考えていなかったみたいですね」と、松田。
「では、何か一本軸を決めて取り組んできたんですか」と私。失礼だ。
「う~ん、決めていないけれど、何かを考えてはいたと思うよ」。
「STEMですか」。
「いや、STEMは途中からですね。STEMを知ったのも途中ですから」。

20年後の未来から逆算するSTEM教育

東京都多摩市立愛和小学校の松田孝校長は、昨年から講演会やセミナーでこんな話をするようになった。

松田 孝 校長

松田 孝 校長

「今の子どもたちは、ランドセルを背負って20世紀の学校にタイムスリップしているようなもの。学校は本来、社会を生き抜くための最先端技術や考え方を学ぶ場なのに、今の学校に最先端は無い。例えば20年後の未来社会、日常生活のあらゆる場面でロボットが活躍し、デジタル機器やデジタル職業が溢れる時代。そんな時代に大人になる子どもたちに、20世紀の大量生産を支えた教育をやっていていいのか。デジタルが当たり前のプラットフォームになるのだから、教育現場だってICTを活用した21世紀のスキルを学べるものでなくてはならない。そのためにPCやタブレットを使うんです」

Pepperを紹介する松田校長

朝会でPepperを紹介する松田校長

つまり、松田の主張は「21世紀の人材を育てるなら、21世紀のやり方でやろうよ」ということなのだ。そのやり方のひとつの集約として「STEM」というキーワードを使おうとしている。

「STEM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、米国ではオバマ大統領の就任以来、STEM教育の重点化を優先課題として取り上げている。日本における「理系教育」と同様に見られがちだが、松田は理系を目指す子どもだけに必要な能力ではなく、21世紀を生き抜くすべての子どもたちに必要な能力だと力説する。

まさに、「20年後の未来から逆算するSTEM教育」なのだ。では、いつからSTEMがキーワードのなったのだろうか。

松田校長の挑戦を総括する

松田が何を手当たり次第やってきたのか。その挑戦の歴史を総括したい。公立小学校の校長が手当たり次第にICT活用に挑戦するのは、並大抵のことではない。ご存じない方はまず、小紙2014年9月の記事「1人1台iPadへ 松田校長の決意と挑戦」を読んで頂きたい。

iPad導入初期の授業風景

iPad導入初期の授業風景

松田が校長を務める東愛宕小学校(愛和小学校へ統合前の校名)が、公立小学校にもかかわらず1人1台iPadを導入したのは、2013年10月のこと。翌11月末に、半年も経たない翌年2月に公開授業を開催すると聞いたのには驚いた。

小紙編集部のスタッフ間でも、「この短期間で何が公開できるんだろう」「急ぐ理由があるんだろうか」と話題になったほどだったが、残念ながら大雪の影響で中止になってしまった。

1人1台iPad導入から2年半、松田の取り組んできたICT活用教育をまとめてみた。

2013年
10月  ・全校児童89名に1人1台iPadを導入。
11月  ・公開授業「iPad5ケ月目の挑戦!」を発表
2014年
1月  ・ロイロノート・スクール(LoiLo)の実証検証に参加
2月  ・アプリゼミ(DNA)の実証検証に参加
3月  ・パナソニック教育財団の実践研究助成特別研究指定校に選定
4月  ・統合により愛和小学校へ校名変更 ・ロイロノート・スクール活用した公開授業
6月  ・授業公開「iPadの日常化による新しい教育Styleの創造―iPad最後の挑戦」を開催
7月  ・授業支援アプリ「スクールタクト」(コードタクト)の開発・実証検証に参加
8月  ・Viscuit(ビスケット)やScratch Jr(スクラッチジュニア)、レゴ マインドストーム EV3などプログラミングツールを導入
9月  ・パナソニック教育財団の実践研究助成に係わる授業研究を開始
10月 ・第2回校内研究協議会
11月 ・第3回校内研究協議会 ・授業公開「i和design-ICT/授業公開」と「i和Design-Exhibition」を開催
12月 ・第4回校内研究協議会
2015年
2月  ・Skypeを使った英語授業に取り組む(ベストティーチャーとコラボ)
3月  ・卒業式でiPad卒業証書を授与(面白法人カヤックとコラボ)
4月  ・Windowsタブレット、Chromebookを導入
5月  ・教科「総合的な学習の時間」でプログラミング授業を開始
6月  ・公開イベント「i和design公開プレゼンデーション」を開催
8月  ・教師向けセミナー「i和design 2015夏 教員セミナー」を開催
9月  ・BB-8を導入 ・第2回世界算数に参加
10月  ・プログラミング教育体験イベント「i和design-Programming Festival」を開催
12月  ・教師向け「i和design」体験講習会 Ludix Labと東大で開催
2016年
2月  ・教職課程の大学生にICT教育を知ってもらう勉強会   ・宇宙エレベーターロボット授業
3月  ・松田校長最後のプレゼン「i和designe-Final Presentation(その到達点と未来)」開催

手当たり次第に取り組んできたように見える松田校長2年半の挑戦を、3つのフェーズに分けてみる。

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